2014年8月5日火曜日

撮影


さて。少々間が空いてしまいましたが、いよいよ実際の撮影です。

とは言っても注意点などはこれまでの記事でほとんど書いてしまっているので、目新しいことは特にありません。ひとつひとつ手順を確認しながら粛々と作業を進めていくだけです。

なお今回は、カメラを固定したベーシックな撮影を前提にしています。カメラワークを伴う撮影については、新しいサンプルムービーと共に後日あらためてレポートする予定です。

それでは、撮影手順を確認していきましょう。


1.カメラのチェック

撮影場所に着いたら、アングルを決める前にカメラのチェックを行います。

 ・メモリーカード残量 : 十分
 ・バッテリー残量 : 十分
 ・露出モード : マニュアル(又は 絞り優先AE)
 ・フォーカスモード : マニュアル
 ・ホワイトバランス : オート以外
 ・記録形式 : RAW(又は JPG)
 ・手振れ補正 : OFF
 ・ノイズリダクション/歪み補正/その他補正 : 全てOFF

先にカメラを固定してしまうと、チェック中のボタン操作でアングルがズレたり、固定方法によってはメモリーカードやバッテリーの交換が困難になることもあるため、事前にできるチェックや設定はこのタイミングで全て済ませてしまいます。各種設定の内容ついては「撮影前の準備(カメラ篇)」をご覧下さい。

なお、一旦カメラを固定してしまうと、自宅でもない限りその後数十分から数時間に渡ってその場所を離れられなくなるため、カメラのチェックと同時に人間のチェックも済ませておきましょう。トイレや防寒/暑さ対策、給水や食糧、暇の潰し方(?)などについて確認しておくと、その後の余裕が違います。


2.インターバルの設定

インターバルの撮影枚数と間隔の設定も、アングルを決める前に行います。

 ・撮影枚数 : 予定より多めに
 ・撮影間隔 : 任意

撮影枚数は、状況に応じて自由に延長ができるように、予定よりかなり多め(1.5倍~2倍程度)に設定しておきます。

撮影間隔については、人やクルマがメインの被写体の場合は短め(1~2秒)、風景や天体が主体の場合は必要な素材の長さと撮影時間から算出(※)します。 ※「撮影前の準備(リサーチ篇)」参照

なお、撮影間隔をカメラの「シャッター速度 + 内部処理時間」より短く設定してしまうと、記録できないコマ(1枚飛びや2枚飛び)が発生します。特に露出モードを「絞り優先(A/AV)」にした場合は、被写体の明るさによってシャッタースピードが変化するので注意が必要です。詳しくは「撮影前の準備(カメラ篇)」の「3.撮影可能間隔の割り出し」をご確認下さい。


3.カメラの固定

カメラのチェックとインターバルの設定が終わったら、いよいよアングルを決めてカメラを固定します。

アングルを決める際には、カメラと4K映像のアスペクト比(画面の横と縦の比率)の違いを意識しなくてはなりません。一般的なデジタルスチルカメラの場合、センサーのアスペクト比は「3:2」(一眼レフやミラーレスなど)又は「4:3」(4/3やコンパクト系)。ファインダーや背面モニタの表示領域も、この比率に合わせて作られています。これに対して4K映像(4K UHDTV)のアスペクト比は16:9。カメラで見るよりも15%~25%ほど縦に狭いことになります。



アスペクト比 3:2
3:2
アスペクト比 4:3
4:3
アスペクト比 16:9
16:9 4K UHDTV
 

この縦方向の差を意識しないで見たままの状態で漠然とアングルを決めてしまうと、4K映像に仕上げた際に被写体の上下が切れたり、窮屈な画になってしまいます。編集時にチルトアップやチルトダウンの動きを加えるつもりならともかく、通常の撮影では上下方向に余裕を持ったアングルを心がけて下さい。HD動画が撮影できるカメラの場合は、動画撮影モードにすることでライブビューの表示が16:9に切り替わるので、それを利用するのもひとつの手です。(但しカメラによっては動画モードにすると表示倍率も変化する場合があります。ご注意下さい)

アスペクト比と同時に、アングルを決める際にもうひとつ意識しておきたいのが、センサーの解像度です。解像度に余裕のあるカメラであれば、後処理で疑似的なカメラワークを加えられるように広めの画角を選んだ方が何かと便利ですし、逆に解像度にほとんど余裕の無い10~12MPクラスのカメラであれば、撮影後の修正はできないものとしてより慎重にアングルを決めなくてはなりません。カメラの解像度の余裕については「4Kタイムラプスのためのカメラ選び(3)」にまとめてあります。

アングルが決まってしまえば、あとはそれに合わせてカメラを固定するだけです。インターバルの設定によっては数時間~十数時間に渡って同じアングルを保持しなくてはならないため、カメラが動いてしまわないようにしっかりと固定して下さい。

展望台などの窓越しに撮影をする場合は、固定と同時に映り込みの防止策を講じます。レンズによってはズームやピントの操作で全長が変わるため、映り込み防止で窓ガラスと接するようにカメラを固定する場合は特に注意が必要です。

また、上下に向けた時に自重で勝手に画角が変わってしまうレンズもあるため、そのような場合はテープを貼ってズームリングも(場合によってはピントリングも)固定します。

屋外の撮影では風対策や雨避けが必要になるかも知れません。さらに、夜間~明け方の撮影ではレンズの結露対策が必要になることもあります。このあたりの対策については、タイムラプスと同様に長時間の屋外撮影を行う、天体や星景の撮影を紹介しているサイトに詳しい情報が出ています。気になる方は探してみて下さい。

カメラの固定手段や映り込みの防止策については「撮影前の準備(グッズ篇) 」を参考にして下さい。


窓越しの撮影
ポケット三脚+ラバーフード+穴あき板で窓越しの撮影


4.露出設定とピントの確認

カメラの固定が終わったら、露出を設定し、最終的なピント調整を行います。

普通の写真撮影なら、1枚1枚シャッターを切る瞬間に適正な露出が得られるように設定すればOKですが、タイムラプス映像の撮影では、基本的に同じ露出設定のままでワンカット分、数百枚におよぶ素材を撮り切らなくてはなりません。従って、マニュアル露出の場合は撮影が終了するまでの間の明るさの変化を予測した上で露出を決めることが重要です。

例えば、空が薄曇りの場合。
この先、雲が切れて陽が差しそうであれば、現在の適正露出よりも暗めに設定。
逆にどんどん雲が厚くなりそうであれば、現在の適正露出よりも明るめに設定。
どちらに振れるか判断できないような状況なら、現在の適正露出をそのまま設定。

このように、時間軸で全体を見渡して最もバランスが良くなるように露出を決定します。同時に、ファイルの保存形式をRAWに設定しておくと、多少予想が外れても後処理で十分調整が可能です。

明け方や夕暮れ時など、明るさが大きく変化するようなシチュエーションでは、時間軸で全体を見渡して最適な露出を設定しても、明るさの変化がセンサーの許容範囲を超えてしまうことがあります。このような場合は、前後の変化を切り捨てて、明るさの変化がセンサーの許容範囲に収まるように短時間での撮影にするか、またはAE(自動露出)を使うことになります。AEを使う際の注意点などについては「4Kタイムラプスのためのカメラ選び(2) 」や、「撮影前の準備(カメラ篇)」の後半「テスト撮影 5.AE(自動露出)のチェック」あたりをご覧下さい。

なお、最新のカメラの中には、インターバル撮影の際に時間軸のつながりを意識したAE制御を行ってくれる機種(Nikon D810 など)もあります。こういったカメラをお持ちの場合は、積極的にAEを使用しても良いと思います。

露出の設定が完了したら、最後にピントの最終調整を行います。特に窓越しの撮影などでレンズが窓ガラスに接しているような場合は、設定のためのボタン操作などで微妙にピントが変化してしまうことがあります。撮影開始の直前には、必ずピントの確認を行うようにして下さい。


5.撮影

露出設定とピントの調整ができたら、最後にもう一度アングルを確認し、事前の計算で決めておいた時刻を待って撮影を開始します。

一旦撮影が始まってしまうと、あとは終了予定時刻まで特にやることはありません。読書をするもよし、ぼーっと空を眺めるもよし。他の人の邪魔にならないように過ごして下さい。20~30分も経つと待つのにも飽きてきて、ファインダーをそっと覗いてみたりすぐ近くで液晶画面を確認したくなったりもしますが、何かの拍子にカメラに触れてアングルがズレてしまわないとも限りません。カメラにはなるべく近づかないようにしましょう。

1テイク分の撮影が終わって、そのまま次の撮影に移る場合は、メモリーカードとバッテリーの残量チェックを忘れずに。また、人間の目ではほとんど変化を感じていなくても、前のテイクとは被写体の明るさが変わっていることもあるため、露出設定も再確認します。メモリーカードやバッテリーを交換したり、露出などを変更した直後は、意識がそのことだけに向いてしまい、たまにピントや画角が微妙にズレていることに気付かないまま次の撮影を始めてしまうことがあります。注意しましょう。


とりあえず、基本的な撮影の手順はこんなところでしょうか。
次回は、編集の前準備についてまとめる予定です。