2014年6月17日火曜日

撮影前の準備(リサーチ篇)


写真でも映像でも、撮影の計画を立てるということは「何を(被写体)」「いつ(時間)」「どこで(場所)」撮るのかを決めることに他なりません。もちろん細かく見ていくと、「どうやって(手法)」「何を使って(機材)」「どのように(演出)」…などいろいろな切り口がありますが、今回は基本になる「何を、いつ、どこで」の3つの視点から撮影前のリサーチについてまとめてみたいと思います。


何を(被写体)

写真や映像を撮る場合、一般的にはこの「何を(被写体)」が既に決まっていて、「だから写真や映像を撮る」とつながることがほとんどだと思います。「子供を撮る」「ペットを撮る」「旅先の風景を撮る」「電車を撮る」などなど。被写体が決まっていれば「いつ」や「どこで」でそれほど悩むこともありません。

しかし4Kタイムラプス映像の場合は、「何を」の部分が被写体ではなく「4K映像を」や「タイムラプス映像を」になっている人が多いのではないでしょうか。「とりあえず4Kタイムラプス映像を撮ってみたい。でも何(被写体)を撮るのかはまだ決めていない」という状態。もしあなたがそうであれば、まずは被写体=撮影する対象を探さなくてはなりません。

ご存じのように4K映像は面積比でFull HDの4倍の解像度を持っています。その分「従来よりも細かいところまで見える」という利点(場合によっては難点)があります。また、タイムラプス映像は「時間圧縮」という大きな特徴を持っています。そのため、普通の映像とはちょっと違う尺度で被写体を選ばなくてはなりません。もちろん習うより慣れろの精神でいろいろと試してみて「4Kタイムラプス向きの被写体」を見つけるのも楽しいのですが、何時間もかけて撮ったカットが軒並みNG!みたいなことが続くとさすがに軽く凹みます。なので、どんな被写体が向いていて何が向いていないのか、事前のリサーチでイメージを掴んでおくことが大切になります。

4Kタイムラプスに「向いている」被写体はYouTubeVimeoなどの動画サイトでいくらでも探せるので、ここでは撮影を不発に終わらせないためのヒントとして、これまでの残念な経験を基に「あまり向いていないもの」と「向いてはいるけど面倒なもの」をいくつか挙げてみます。


 【あまり向いていないもの】

  ・海や湖などの水面
  ・屋外の草や木
  ・画面を横切る人や乗り物
  ・車窓からの風景


タイムラプス映像の被写体選びの基本は「ゆっくり動くもの」を見つけること。例えば時計の針のように、時間を圧縮することで初めて動きが見えてくるような被写体が理想的です。なので逆に「普通の速度で動くもの」は邪魔になることが多々あります。

風を受けて不規則に揺れる水面や草木は、大抵の場合チラチラと動く目障りな存在にしかなりません。それどころか、細かく動くことでその部分がブレて見え、4Kならではの解像感もスポイルしてしまいます。例えば今回のサンプルムービの冒頭の3カット。それほど風は強くないのですが、水面の細かい波や草木の動きが邪魔なものに感じられます。

同様に、画面を横切る人や乗り物があるような場合も注意が必要です。風による揺れとは違って方向性のある連続した動きなので、カメラから離れていれば被写体として問題なく成立するのですが、これがカメラのすぐ目の前、2~3コマ程度でフレームを横切ってしまうような位置にある場合は、動きの連続性が薄くなる上に画面に占める面積が大きいため、人や車が突然現れていきなり消えるような唐突感だけが残ることになります。サンプルムービーの中では、雷門や昼間の浅草寺のカット。画面の奥に大きな目標物があるためにまだ救われていますが、それでもチラつく感じは否めません。

被写体との距離

車窓からの風景は速度が問題になります。1秒インターバルで撮影した素材を30Pで仕上げた場合、時間圧縮率は30倍。カメラを積んだ車両の移動速度をゆっくり目の30km/hとしても、仕上がりのスピードは900km/h。音速に近い速度で地上を疾走!と考えるとちょっと楽しそうですが、実際のところは余程条件に恵まれない限り、目まぐるしく変わる風景や小刻みな揺れのせいで、見ていて非常に疲れる映像になります。速度が遅くてカーブも揺れも少ない乗り物なら…ということで現在いろいろとテスト中ですが、それについては後日あらためてレポートしたいと思います。


 【向いているけど面倒なもの】

  ・動きのない物や風景
  ・群衆や車群
  ・星空


まるで動きのない物や風景でも、太陽の位置によって影が伸びたり、それすら無い場合でも被写体の代わりにカメラ自体を動かしたりすることで、静止画ではなく映像に見えるように撮影することは可能です。影の変化などはタイムラプスならではの表現ですし、カメラの移動も「4K動画が撮れないカメラで4K映像を作る」という意味ではひとつの正しい答えです。しかし、それらの撮影にはそれなりの時間や手間が掛かります。影の動きをしっかりと見せるには最低でも2~3時間の撮影が必要で、その間、雲が掛からずに太陽が出続けていてくれなくてはなりません。カメラ自体をゆっくりスムーズに動かすには専用のクレーンやドリー(台車)を用意する必要があります。もちろんそういった準備や試行錯誤も含めてタイムラプスの醍醐味ではあるのですが、最初のうちはもう少し動きのある被写体を選んだ方が無難です。

群衆や車群については、4K解像度になることで人間の顔や車のナンバープレートが従来よりもはっきりと識別できてしまうという問題を含んでいます。家族や仲間内だけで楽しむ映像であればそれほど神経質になる必要はありませんが、YouTubeなどを通じて不特定多数の方に公開する映像は、肖像権や個人情報などの法律上の解釈以前に、制作者のマナーとして顔やナンバーを識別できないように修正しておく必要があると考えます。顔認識などを使って全自動で修正を加えてくれるアプリケーションがあってもよさそうなものですが、とりあえず見当たらなかったので(あれば是非教えて下さい)今回のサンプルムービーでは全て手作業で修正を行いました。雷門、浅草寺、新宿、渋谷の各カットで、ひとコマづつ修正してはTIFFで書き出すという作業をおよそ1,200枚、丸2日がかりです。仕上がりの品質には何ら関係しない虚しい作業になるので、被写体選びの段階で回避できるのであればそれに越したことはありません。この“解像度が良すぎる問題” は、今後4Kや8Kが普及して行く過程で様々な手間やトラブルを生み出しそうな予感がします。

星空(星景)については、相応の機材と経験、撮影技術が必要です。撮影場所や日時の選定からノイズ対策、レンズの結露の予防など、「星景写真」をキーワードに検索をかけるとさまざまな情報が得られるので、まずは知識の習得から始めて下さい。既に知識と経験をお持ちの方は、その技術と手元の機材を活かして是非4Kタイムラプスにチャレンジしてみて下さい。


いつ(時間)

被写体さえ決まってしまえば、その時点で「いつ」「どこで」についてもある程度イメージが出来上がっていると思います。あとはそのイメージを実際の情報と照らし合わせて、撮影を行う具体的な時間と場所を決定します。場所の方が先に決まることもありますが、ここではまず「いつ」について考えてみます。

タイムラプス映像の撮影では、数分~数時間後にレンズの前で起こることを予測した上で、その予測に基づいてカメラをセットし、インターバルの秒数などから逆算した適切なタイミングで撮影を始めなくてはなりません。何かが起こり始めてからカメラを回しても大抵の場合は手遅れです。従って「いつ何が起こるのか」という事前のリサーチが非常に重要になってきます。

例えば日の出や日没、月の動きや影の動きを撮りたいのであれば、以下のようなサイトで時刻や位置の情報を入手して、それらの情報を基に「いつ」を決定します。


 
計算例


もちろん、自然だけでなく人工物についての情報も役に立ちます。例えば東京の夜景を撮影するなら、以下のような情報をチェックしておきます。



 
他にも、電車や船、飛行機などの運行時刻や、遊園地などの営業時間、霧や雲が晴れる時刻(過去の統計や天気図から推測)、撮影場所の制約(XX時以降立ち入り禁止)等々、撮影の内容に合った情報を事前に集め、それらに基づいて結果を予測しながらスケジュールを組めば、タイムラプス映像の撮影でありがちな「ずっと撮っているけど何も起こらない」や「撮影を止めた途端に面白い動きが」という情けない状況に陥る確率もぐっと減らせるのではないかと思います。


どこで(場所)

撮影場所については、端的に言ってしまうと「その場所で撮影できるのか?」というリサーチがメインになります。

これまでにも何度か書きましたが、ビルの展望台や景勝地では三脚の使用が禁止されている所が少なくありません。商業施設や美術館、博物館、歴史的建造物などでは撮影行為そのものを禁止にしている所もあります。三脚の使用や撮影行為が禁止されている背景には、主に以下のような理由が挙げられます。

  ・通行人や他の利用者の邪魔になる
   (展望台、商業施設、道路、公園など)

  ・建物や展示物に損傷を与える可能性がある
   (美術館、博物館、歴史的建造物など)

  ・著作権や肖像権を侵害する恐れがある
   (美術館、著名な建造物など)

  ・望遠レンズによる盗撮やのぞき行為の防止
   (一部のビルの展望室など)

  ・私有地のため
   (施設の敷地内など)

撮影しようとしている場所がこれらのいずれかに相当しそうな場合は、三脚やその他のカメラ固定器具の使用および撮影そのものの可否について、事前にしっかり調べておく必要があります。一例として、今回のサンプルムービーを撮影するにあたって、事前リサーチによって撮影を断念した場所を挙げておきます。三脚の使用は禁止でもポケット三脚等は使用可の所もありますが、今回は三脚禁止が判明した時点で撮影場所の候補から外しています。

  東京都庁(三脚禁止) ※ポケット三脚もNG
  文京シビックセンター(三脚禁止)
  六本木ヒルズ スカイデッキ(三脚禁止)
  聖路加ガーデン(三脚禁止)
  丸ビル(三脚禁止)
  アイ・リンクタウン(三脚禁止)
  お台場海浜公園(三脚禁止)
  貿易センタービル(インターバル撮影禁止)
  船の科学館(本館休館中)
  新宿NSビル(展望ロビー廃止)

また、リサーチによって撮影や三脚の使用は可でもカメラの設置が難しかったり希望通りの眺望が得られないことが判明する場合もあります。窓が遠くて映り込みが消せないとか、撮りたい方向に面していない、などなど。例えば今回は以下の4か所がそうでした。

  東京スカイツリー
  新宿野村ビル
  新宿センタービル
  キャロットタワー

撮影という行為は、多かれ少なかれ周囲に迷惑を及ぼします。特に三脚や一眼レフを使った(一般の人から見れば)大掛かりな撮影や、同じ場所に長時間居座ることになるインターバル撮影では、事前のリサーチによる場所や時間の選定をしっかりと行い、周囲への迷惑を最小限に留めるようにして下さい。
 
 

2014年6月7日土曜日

撮影前の準備(カメラ篇)

 
今回は「撮影前の準備(カメラ篇)」として、4Kタイムラプス映像の撮影に向けたカメラのセットアップについてまとめます。


ファームウェアの確認

まずは手始めに、カメラのファームウェアを確認しましょう。

ファームウェアというのは、電子機器の動作を制御するためにその機器に組み込まれたソフトウェアのこと。もちろんデジタルカメラの中にも入っています。そしてこのファームウェア、不具合を修正したり新しい機能を追加するために、バージョンアップされることがあります。メーカーのWEBサイトの「サポート」もしくは「ダウンロード」のページを覗くと、機種ごとのファームウェアの情報が公開されているので、必要に応じてダウンロードと更新作業を行って下さい。

 


例えば今回のサンプルムービーの撮影で使用したカメラ、LUMIX G6 では、フォーカスリングが付いていないレンズ LUMIX G VARIO 12-32mm/F3.5-5.6 を装着した場合、当初はオートフォーカスのみでマニュアルでのフォーカス操作は出来ませんでした。しかし、その後のファームウェアの更新によって現在はフォーカス操作が可能になっています。このように使い勝手が大きく変わるバージョンアップもあるため、ファームウェアは必ず確認するようにして下さい。ユーザー登録をしておくとお知らせのメールが届くので便利です。



タイムラプス映像の撮影に向けた設定

ファームウェアの確認/更新が終わったら、次はカメラの設定です。

設定できる項目は多岐に渡りますが、ここでは一般的なことは割愛して、タイムラプス映像を撮影する上で注意しておきたい点のみを取り上げます。
 

・フォーカスモード

マニュアルフォーカス(MF)に設定。

フォーカスアシスト機能(ピントが合っている部分が強調表示されたり見やすいように画面が拡大されたりします)が付いている機種は、併せて設定しておきます。
 
フォーカスモードメニュー LUMIX G6
フォーカスモードレバー Nikon D800E
 
 

 
・露出モード

マニュアル露出モード(M)に設定。

同時に、露出を決める「絞り」「シャッター速度」「感度」の設定方法と、カメラに内蔵されている露出計の表示と使い方、測光モードについても確認して下さい。最初は少し複雑&煩雑に感じるかも知れませんが、安定した映像を得るための基本(※)です。マニュアル露出モードに慣れて露出調整の感覚がつかめたら、状況に応じて「絞り優先AE(A/Av)」を併用していきます。 ※ 4Kタイムラプスのためのカメラ選び(2)参照

露出モード LUMIX G6
露出モードボタン Nikon D800E
測光モードメニュー LUMIX G6
測光モードダイヤル Nikon D800E
 


・ホワイトバランス(WB)

オート(AWB)以外 に設定。

ホワイトバランスとは、撮った写真の色合いを決定する調整項目。露出モードと同様、オートで撮ると映像としてつないだ時に色調が安定せずにチラついて見える可能性があります。RAW記録の場合はざっくりと「太陽光」または「曇り」あたりに設定(後で自由に調整できます)、JPEG記録の場合は仕上がりのイメージに近くなるように調整して下さい。なお、ホワイトバランスは「通常使う設定」を自分で決めておくと各カットの色合いに統一感が出てスッキリとした映像に仕上がります。

ホワイトバランスメニュー LUMIX G6
ホワイトバランスボタン Nikon D800E
  


・記録形式

RAW(又はJPEG)に設定。

後処理での調整幅を確保するため、RAW形式が選べるカメラはRAWを、それ以外のカメラはJPEGの最高画質に設定して下さい(JPEG以外にも選択肢がある場合は画質が良い方を選択)。ちなみにRAWで記録する場合は「RAW+JPEG」設定にならないように注意。RAW+JPEGは同じ画像をRAWとJPEGの両方の形式で記録するため、撮影可能枚数が減る上に記録にも余計な時間が掛かってしまいます。

記録形式メニュー LUMIX G6
 


・手振れ補正

必ず OFF に設定。

手振れ補正が働いたままだとひとコマひとコマの位置が微妙にズレることがあるので要注意です。

 
手ブレ補正メニュー LUMIX G6
 


・ノイズリダクション/歪み補正/その他補正

とりあえず全て OFF に設定。

短い間隔でシャッターを切る場合に補正処理が間に合わなくなってコマ落ち(画像が記録できていない)が発生することがあります。RAWで記録しておけば大抵の補正は現像時に追加できるので、基本的には全てOFFでの撮影をお勧めします。

補正メニュー Nikon D800E



・インターバル撮影設定

ここまでの設定がひと通り出来たら、最後にインターバル撮影の設定と操作方法を確認します。インターバル撮影機能が内蔵されているカメラでは、メニューの呼び出し方、撮影間隔や枚数の設定方法、撮影開始までの手順など。レリーズリモコンで対応する場合は、カメラにリモコンを接続して、同様に各種設定と撮影開始までの手順を確認して下さい。

インターバル撮影メニュー LUMIX G6
インターバル撮影メニュー LUMIX G6
 


テスト撮影

設定が完了したらいよいよインターバル撮影機能を使ったテスト撮影です。例えば下記のような手順でカメラとレンズの特性をチェックします。
 

1.シャッター速度の誤差(変動)チェック

明るさの変化が少ない場所と時間(屋外なら晴れた日の日中、室内なら蛍光灯やテレビの光の影響を受けない場所)を選んで行います。マニュアル露出モード/絞り解放(F値が最小)/通常使う感度 にセットした状態で、適正露出になるように被写体の明るさとシャッター速度(以下SS)を調整して、数秒程度のインターバルで10枚ほど撮影。

撮影した画像の明るさが全部変わらなければ問題ありませんが、もし1枚1枚の明るさが細かく変わるようであれば、シャッターの動作にバラつきが発生している可能性があります。SSの設定をいろいろと変えて(絞りは解放のまま。適正露出になるように被写体の明るさを調整)テストを行い、特定のSSでのみバラつきが出る場合はそのSSを使わないようにします。全域でバラつきが出る場合は(程度にもよりますが)メーカーのサービスセンターに相談して下さい。

電子シャッターが使えるカメラでは、メカニカルシャッターと電子シャッターの両方でテストを行います。


2.絞りの誤差(変動)チェック

このチェックも、明るさの変化が少ない場所と時間を選んで行います。マニュアル露出モード/上のチェックで問題のなかったSS/通常使う感度 にセットした状態で、適正露出になるように絞りを調整(解放以外のF値を選択)して、数秒程度のインターバルで10枚ほど撮影。

撮影した画像の明るさが全部変わらなければ問題ありませんが、もし1枚1枚の明るさが細かく変わるようであれば、絞り羽根の動作にバラつきが発生している可能性があります。このチェックもF値を変えて繰り返しテストを行いますが、SSの場合とは異なり、絞りのバラつきの場合はF値が大きくなればなるほど目立つようになるのが一般的です。従って「どのF値までなら許せるか」を見極める必要があるのですが、確実なところは実際に映像にしてみないと判別できません。とりあえずは「明らかにバラつきが目立たないF値」の範囲をチェックし、それがあまりにも低い(解放から軽く絞っただけで目立つ)ようであれば、そのレンズは使わない(又はサービスセンターに相談)か、絞り羽根の影響が出ない解放限定で使うようにして下さい。

なお、「絞り環」(レンズ側で絞りを調整するためのリング)が付いたレンズの場合は、カメラと設定によっては絞り環を使ってレンズ側でF値を設定(絞り羽根を固定)することでバラつきの発生を回避できることがあります。絞りの設定は撮影した素材の解像感にも関係してくるため、特に4K仕上げの場合は絞りが安定したレンズを使いたいものです。


3.撮影可能間隔の割り出し

デジタルカメラでは、1枚の写真の撮影が完了するまでに、実際にシャッターが開いている時間に加えて、シャッターを開くまでの準備や、撮影後にイメージセンサーから取り出したデータを変換したり記録したりといった内部処理の時間が必要になります。そのため、インターバル撮影を行う場合は「シャッター速度 + 内部処理時間」以上の撮影間隔を空けなくてはなりません。

問題は、この「内部処理時間」がハッキリしないこと。カメラの機種はもちろんのこと、各種設定やメモリーカードの種類によっても異なるため、実際の使用環境に合った値を自力で割り出しておく必要があります。

本番で使う予定のメモリーカードをカメラに装着し、各種設定も済ませた上で、インターバルを1秒に設定。とりあえずSSを1/2秒にセットして正常な間隔で撮影出来るかどうかをチェックします。30枚ほど連続で撮影して問題がなければSSをより長く、問題あり(一部もしくは全ての撮影間隔が2秒になってしまう)の場合はSSをより短くセットしてチェックを繰り返していき、最終的に「問題なく撮影できた中で元も長いSS」を1秒から引いた値がその使用環境で必要な「内部処理時間」ということになります。もしSSを1/30秒程度にまで上げても正常な間隔で撮影できない場合は、インターバルを2秒に設定し直して再度1/2秒からチェックを行って下さい。当然ですがこの場合は正常な撮影間隔が2秒、問題がある場合は4秒、そして問題なく撮影できた中で最長のSSを2秒から引いた値が「内部処理時間」になります。

本番の撮影時には「使用するSSと テストで割り出した「内部処理時間」の合計」が「インターバル撮影機能で設定する撮影間隔」よりも長くならないように調整します。特に日没時に絞り優先AEを使う場合は、暗くなるにつれてSSが遅くなるので慎重な調整が必要です。

「内部処理時間」は記録形式の設定(RAW/JPEG)やノイズリダクションの有無、歪みなどの補正の有無、使用するメモリーカードなどによって大きく変動します。これらの設定を変えたり新しいカードを使う場合は、その都度テストを行って時間を割り出しておくことをお勧めします。


4.バッテリーの持続時間(撮影可能枚数)の確認

本番の撮影に近い形で、連続してどれ位の枚数が撮影できるのかを確認します。もちろん使用環境や設定で持続時間は変わりますが、それでも大体の目安を知っておくと撮影中の安心感が違います。特に新品のバッテリーの場合は使い始めの1~2回は性能が十分に発揮できないことがあるため、慣らし運転も兼ねて本番前に複数回のチェック行っておくと万全です。


5.AE(自動露出)のチェック

せっかくなので、最後にAEのチェックも行っておきましょう。

日没または夜明けの、明るさが大きく変化する時間帯を選んで、本番撮影のつもりで2時間程度の撮影を行います。インターバルを15秒に設定すると、撮影枚数は約500枚。上の「バッテリーの持続時間(撮影可能枚数)の確認」を兼ねてもいいかも知れません。

使用する露出モードは「絞り優先AE(A/Av)」、F値は絞り羽根による誤差を出さないために最小(解放)にセット。測光モードはメーカーによって名称が異なりますが、スポット測光の反対側、広く全体的に測光するモードに合わせて下さい。感度は、明るい時にシャッター速度が上限を超えずに、また暗くなってからも概ね10秒以内に収まる値に。明暗の差が激しいと適切な感度を選んでも収まらなくなる可能性があるので、そこそこ明るい夜景(遠景)が見える場所が理想的です。カメラのすぐ前を人やクルマが頻繁に横切ったり、目の前に明るい街灯があるような所はAEが必要以上に反応してしまうので今回のテストでは避けて下さい。

撮影が終わったら、編集ソフトを使って実際に映像にしてみるか、連続した何枚かの写真を比較して、明るさにバラつきが無いかを確認します。「シャッター速度の誤差(変動)チェック」では特に問題が無かったにもかかわらずバラつきが目立つようであれば、タイムラプス映像の撮影にはあまり向いていないAEかも知れません。条件を変えて繰り返しテストを行うか、マニュアル露出モードで何とかする方法を検討しましょう。逆にほとんど違和感が無ければ、積極的にAEが使えるカメラかも知れません。

AEはその時々の光の状況によって結果が変化するので、たまたま良かった/悪かった ということもあるため1回だけの結果では何とも判断しづらい所ですが、少なくとも「何が原因でこの結果になったのか」ということを考える材料にはなると思います。




少し長くなりましたが最後までお読み頂きありがとうございました。
次回は撮影前の準備のラスト、「リサーチ編」をお送りする予定です。
 
 
 

2014年6月3日火曜日

撮影前の準備(グッズ篇)


さて。タイムラプス用のカメラは用意できたでしょうか?
それでは早速撮影に…といきたいところですが、その前に準備をしっかり整えましょう。

という訳で、今回は「撮影前の準備(グッズ篇)」をお送りします。


メモリーカード

写真の撮影でもビデオの撮影でもタイムラプス映像の撮影でも、まず必要なのが撮影した画像を記録するためのメモリーカード。使用するカメラの規格に合ったものを用意しましょう。

タイムラプスの場合、まとまった枚数の写真を連続して撮影/記録しなければならないため、1テイク毎に残量が気になってしまう容量の小さなカードよりも、交換回数が少なくて済む大容量のカードの方が向いています。ちなみに30Pの映像の場合、10秒分(300枚)のRAWデータを記録するために必要なカードの容量は、今回使用した LUMIX G6(16MP)で約5.5GB、D800E(36MP)は約12.5GB(いずれも実測値)。64GBのカードを用意すれば、5~10テイク分をまとめて記録できる計算になります。

転送速度に関しては、高速連写をする訳では無いので極端に遅いものでなければ大丈夫です。

CFカードとSDHCカード



三脚等のカメラ固定器具

タイムラプス映像の撮影に無くてはならないのが、撮影の間カメラを固定しておくための器具。カメラの重量に見合った、しっかりとしたものを選んで下さい。

まずは三脚。極端な話シャッターが開いている間だけカメラを固定できればいい普通の写真撮影と違って、タイムラプスでは数分~数時間に渡ってカメラのポジションを一定に保つ必要があります。

なのでカメラを載せただけで脚がたわむような軽量三脚はNG。ムービー用のゴツい三脚とまでは言いませんが、写真用の三脚の中でもある程度の重さがあって剛性が高いものを選ぶようにして下さい。新品だとそれなりにいい値段がしますが、実用品と割り切って中古で探すと掘り出し物が結構あります。また、知人友人親戚一同に片っ端から声を掛けるとかなりの確率で物置や押し入れから「もう使っていない三脚」が出てきます。有難く使わせて頂きましょう。

前回も書きましたが、ミラーレスやコンパクトデジカメなど、カメラが軽くて小さい場合は三脚以外の選択肢もあります。

ミニ三脚やポケット三脚と呼ばれるジャンルでは、Manfrottoの「POCKET三脚」JOBYの「ゴリラポッド」 などが定番です。高さはありませんが、その分、下手な三脚よりも遥かに安定します。タイムラプスでは風景が主体になることが多いため、設置する場所を見つける手間を厭わなければ、全てのカットをこれひとつで撮ることも十分可能だと思います。

Manfrotto POCKET三脚

その他、ガラス越しの撮影に最適な吸盤式のマウントや、柱や手すりなどにカメラを固定できるクランプタイプのマウントなど、使える場所は限定されますが便利な固定器具が色々と出ています。比較的安価な製品が多いので、用途に合わせていくつか揃えておくと何かと役に立ちます。

吸盤マウント
 
なお、これらの固定器具を使って高い場所にカメラを設置する場合は、万が一の落下に備えて必ず “命綱” を付けるようにして下さい。100円ショップなどで売っているアクセサリー用のカラビナと普通のヒモの組み合わせで十分です。

カメラ用命綱
カメラ用命綱



予備バッテリー

撮影枚数が嵩むので、最低でも1個は用意しておきたいところ。USB給電に対応したカメラであれば、汎用のモバイルバッテリーという手もあります。また一部のデジタル一眼レフやミラーレスには、バッテリーや乾電池を追加搭載できる「バッテリーグリップ」と呼ばれるオプションもあります。自分のカメラや撮影スタイルに合わせて選んで下さい。

ちなみにタイムラプスではAFや内蔵フラッシュを使うことが無いため、極端な長時間露光でもしない限りはメーカーが公表している撮影可能枚数よりもかなり多く撮影できることがほとんどです。予備バッテリーは最初にまとめて買うよりも、様子を見ながら買い足していくことをお勧めします。

予備バッテリー



映り込み防止グッズ

タイムラプスの場合、高所から撮影する(したくなる)ことが少なくありません。今回のサンプルムービーでもほぼ半数のカットが高所からの撮影です。「××と煙は高い所が好き」という理由が当てはまるのかどうかという議論はさて置き、これには「目の前をチラチラと動き回る余計なものが無い」「空や地表の変化を広く大きく捉えられる」「タイムラプスと併せて使うことの多いミニチュア効果が出しやすい」などの真っ当な理由があります。そして、そんな高所からの撮影で邪魔になるのが「窓ガラス」です。

山の上や自宅のベランダならともかく、高層ビルやタワーの展望台ではガラス越しに風景を見ることがほとんどです。屋上やテラスに出られる建物もありますが、大抵は柵や構造物が邪魔になってしまい撮影には不向きです。そんな訳で仕方なくガラス越しに風景を撮影することになるのですが、何も考えずにそのまま撮ると、100%に近い確率で「映り込み」(撮影者や室内の照明などがガラスに反射して写ってしまうこと)が発生します。

この映り込みを無くしたり軽減するために用意しておきたいのが、映り込み防止グッズ。以下に代表的なものを挙げてみます。


・ラバーフード

ラバー素材で出来たやわらかいレンズフード。このフードを装着したレンズをガラスに押し付け、フードの先端とガラスの間に隙間が出来ないように固定して使います。レンズそのもの以外の映りを全てカットできるため効果は絶大ですが、フードの変形範囲を超えてガラスとの間に隙間が出来ると途端に効果が激減します。またギリギリまで変形させるとフードの端がフレームに入ってしまうこともあるため、ガラスに対して斜めにカメラを向けるような場合にはあまり向いていません。但しそのような場合でも、セットアップ時にレンズの縁でガラスに傷をつけないためのバンパーとして装着しておくことをお勧めします。

ラバーフード
ラバーフード


・穴あき板

レンズ先端(フードを付ける場合はフード先端)と同じ大きさの穴を開け、片面を黒い無反射の素材や塗料で覆った板。穴から少しだけレンズを突き出して、カメラを向けている方向の一辺がガラスに密着するようにセットします。A4程度の大きさでも意外と効果はありますが、カメラと一緒に持ち歩くには少々邪魔くさいところが難点です。

穴あき板
穴あき板


・穴あきカーテン

穴あき板のカーテン版。自由に曲げられるので調整幅も広く持ち運びにも便利ですが、吸盤やテープを使ってガラスに直接固定するため、傍から見るとちょっと大がかりな感じに。使いたい場合は事前に許可を得ておいた方が無難です。

穴あきカーテン


・黒パーマセル

無反射の黒い紙でできた粘着テープ。ラバーフードとガラスの隙間を埋めたり、穴あきカーテンの固定に使ったり、あると何かと便利です。カメラ屋さんで入手可能。

黒パーマセル


なお、窓ガラスには飛散防止やUVカットのためにフィルムが貼られていることがあります。機材等を当てないことはもちろんですが、不用意にテープを貼ったり吸盤を付けたりすると剥がす際にフィルムを傷付けてしまうことも無いとは言い切れません。映り込み対策は万全で臨みたいところですが、状況によっては諦めることも肝心です。また、後日まとめるつもりですが、高層ビルなどの展望台の多くが三脚を使った撮影を禁止しています。撮影に際しては念入りな事前調査を行うようにして下さい。



撮影時間の計算表

撮影間隔毎に、一定の長さの動画素材を撮るのに必要な時間をまとめた表です。今回のサンプルムービーの撮影では、「30P仕上げでワンカット10秒」を基準に下のような表を作ってカメラに貼っていました。単純な撮影終了時間の算出の他、「カット頭から5秒後に日没を迎えるには何時何分から撮り始めたらいいのか」などの計算にも使えて便利です。

撮影時間の計算表

もちろん、暗算が得意な人には必要ありません。



快適グッズいろいろ

タイムラプスの場合、私有地でもない限り一旦撮影を開始すると長時間に渡ってカメラに付きっ切りになってしまいます。それに備えて、椅子や本、食べ物や飲み物、冬場なら上着やカイロなど、現地で快適に過ごすためのグッズを用意しておきましょう。




次回は「撮影前の準備」の2回目、「カメラ篇」と題してカメラまわりの準備についての話をお送りする予定です。