2014年10月1日水曜日

編集作業


撮影も無事に終わり、4Kタイムラプス映像の制作も残すは編集作業のみとなりました。

一般的なムービーカメラで撮影した動画の編集であれば、おもむろに編集ソフトを立ち上げて撮影した素材を読み込み、使うテイクを選んでつなぐ長さや順序を調整して…となる訳ですが、4Kタイムラプス映像の編集では、それらの前にやっておかなくてはならない作業が幾つかあります。

ざっと見てみましょう。



1.現像処理(RAW形式で保存した場合)

RAW形式で保存した写真は、現像と呼ばれるプロセスを踏まないと一般的な画像として扱うことができません。そこでまず、撮影してきた全てのファイルに対して現像処理を行い、それと同時に写真の色合いや明るさなどを調整します。

現像作業にはカメラメーカーの純正品やAdobe Lightroomなどの写真向け現像ソフトを使用するのが一般的です。RAWファイルをそのまま扱える動画編集ソフトもありますが、4Kを超える。


2.写真を映像に変換

タイムラプスの場合、当然ですが撮影した素材は映像ではなく個別の写真として記録されます。一部のカメラにはインターバルで撮影した写真を映像に変換して記録してくれるものもありますが、現在のところ4Kには対応していません。

そんな訳で、撮影/現像した一連の写真を並べてひとつの動画ファイルに変換する作業が必要になります。大抵の映像編集ソフトには、連続した画像ファイルをシーケンスとして読み込む機能が付いているのでそれを利用します。


3.トリミングや縮小、カメラワークの追加

撮影した素材の解像度はカメラの機種や設定によって異なります。従って、4K映像(3,840×2,160pixels)として仕上げるためには、素材をトリミングしたり、サイズを縮小して4K解像度に合わせなくてはなりません。

素材の余白を利用した疑似的なパンやチルト、ズームを加えるのもこのタイミングです。場合によっては同時にスタビライズ処理(移動撮影などによる映像の揺れを低減させる処理)を行うこともあります。

本来であればカメラワークの追加やトリミングは前後のカットとのつながりを見ながら編集の中で調整した方がイメージが掴みやすいのですが、余白を残したままの素材は4Kよりもさらにデータが重く扱い辛いため、編集作業には持ち込まずに準備段階で済ませてしまうことをお勧めします。


4.編集作業用ファイルの生成

非圧縮の4K映像をそのまま編集しようとしても、普通のPCではデータが重過ぎて再生すらまともに出来ません。そのため、個人レベルの一般的な編集では、本来の素材とは別に用意した「軽いファイル」を使って作業を行い、編集がひと通り済んでから元の高画質なファイルに差し替えて最終的な出力を行うという手順を踏むことになります。今回のサンプルムービーでは、全てのカットでFull-HDに解像度を落としたH.264/mp4ファイルを用意しました。



これらの作業は、ひとつひとつ順を追って行うこともあれば、いくつかをまとめて行う場合もあります。

例えば、最初に1の現像処理を行って中間素材となる連番のTIFFファイルを生成しておけば、2以降の作業は(PCの処理能力的に)格段に楽になりますが、タイムライン上での色合いや明るさなどの調整(グレーディング)の幅は限定されてしまいます。

逆に中間素材を作らずにRAWデータのままで映像への変換やカメラワークの追加などの作業を行うと、グレーディングの自由度は確保できますが、プレビューなどのレスポンスが大きく低下することになります。

どちらを取るかは状況次第。

4K(またはそれを超える)解像度を持った映像素材を自在に扱うには、現時点(2014年)の標準的なPCではまだまだ能力が不足しています。そのため、常に効率を意識し、状況に応じて柔軟に処理の方法を変えていくことが、4K映像の編集では重要になります。「これが正解」という明確な答えはありませんので、試行錯誤を楽しみながら自分の作業環境に合った方法を見つけて下さい。



さて、素材の準備が整ったところで実際の編集作業に移ります。

…と言っても、ここから先は特別なことは何もありません。上の4で生成した軽いファイルを使って普通に編集をした後に、素材を本番用に差し替えてレンダリングを行えば完成です。フレームレートやビットレート、色の深さなどの設定は、再生環境に合わせてお好みで。厳密に言うと解像度だけではなく、高いフレームレートや色彩の表現力も含めての4K UHDTVですが、とりあえず現時点では解像度さえクリアしていれば「4K」を堂々と名乗って良いと思います。

今回のサンプルムービーでは Adobe Premiere PRO で編集を行い、Media Encoder を使って非圧縮AVI(原版)とH.264/mp4(再生用)の2種類のファイルを書き出しました。具体的な編集やレンダリングの手順については使用するソフトによって異なるため、ここでは割愛します。



以上、カメラ選びから始まって撮影/編集に至るまで、4Kタイムラプス映像の制作手順についてはこれにて一旦終了です。長々とお付き合い頂きありがとうございました。次回からは不定期で(これまでも不定期でしたが…)単発でのレポートをお送りしていく予定です。



2014年8月5日火曜日

撮影


さて。少々間が空いてしまいましたが、いよいよ実際の撮影です。

とは言っても注意点などはこれまでの記事でほとんど書いてしまっているので、目新しいことは特にありません。ひとつひとつ手順を確認しながら粛々と作業を進めていくだけです。

なお今回は、カメラを固定したベーシックな撮影を前提にしています。カメラワークを伴う撮影については、新しいサンプルムービーと共に後日あらためてレポートする予定です。

それでは、撮影手順を確認していきましょう。


1.カメラのチェック

撮影場所に着いたら、アングルを決める前にカメラのチェックを行います。

 ・メモリーカード残量 : 十分
 ・バッテリー残量 : 十分
 ・露出モード : マニュアル(又は 絞り優先AE)
 ・フォーカスモード : マニュアル
 ・ホワイトバランス : オート以外
 ・記録形式 : RAW(又は JPG)
 ・手振れ補正 : OFF
 ・ノイズリダクション/歪み補正/その他補正 : 全てOFF

先にカメラを固定してしまうと、チェック中のボタン操作でアングルがズレたり、固定方法によってはメモリーカードやバッテリーの交換が困難になることもあるため、事前にできるチェックや設定はこのタイミングで全て済ませてしまいます。各種設定の内容ついては「撮影前の準備(カメラ篇)」をご覧下さい。

なお、一旦カメラを固定してしまうと、自宅でもない限りその後数十分から数時間に渡ってその場所を離れられなくなるため、カメラのチェックと同時に人間のチェックも済ませておきましょう。トイレや防寒/暑さ対策、給水や食糧、暇の潰し方(?)などについて確認しておくと、その後の余裕が違います。


2.インターバルの設定

インターバルの撮影枚数と間隔の設定も、アングルを決める前に行います。

 ・撮影枚数 : 予定より多めに
 ・撮影間隔 : 任意

撮影枚数は、状況に応じて自由に延長ができるように、予定よりかなり多め(1.5倍~2倍程度)に設定しておきます。

撮影間隔については、人やクルマがメインの被写体の場合は短め(1~2秒)、風景や天体が主体の場合は必要な素材の長さと撮影時間から算出(※)します。 ※「撮影前の準備(リサーチ篇)」参照

なお、撮影間隔をカメラの「シャッター速度 + 内部処理時間」より短く設定してしまうと、記録できないコマ(1枚飛びや2枚飛び)が発生します。特に露出モードを「絞り優先(A/AV)」にした場合は、被写体の明るさによってシャッタースピードが変化するので注意が必要です。詳しくは「撮影前の準備(カメラ篇)」の「3.撮影可能間隔の割り出し」をご確認下さい。


3.カメラの固定

カメラのチェックとインターバルの設定が終わったら、いよいよアングルを決めてカメラを固定します。

アングルを決める際には、カメラと4K映像のアスペクト比(画面の横と縦の比率)の違いを意識しなくてはなりません。一般的なデジタルスチルカメラの場合、センサーのアスペクト比は「3:2」(一眼レフやミラーレスなど)又は「4:3」(4/3やコンパクト系)。ファインダーや背面モニタの表示領域も、この比率に合わせて作られています。これに対して4K映像(4K UHDTV)のアスペクト比は16:9。カメラで見るよりも15%~25%ほど縦に狭いことになります。



アスペクト比 3:2
3:2
アスペクト比 4:3
4:3
アスペクト比 16:9
16:9 4K UHDTV
 

この縦方向の差を意識しないで見たままの状態で漠然とアングルを決めてしまうと、4K映像に仕上げた際に被写体の上下が切れたり、窮屈な画になってしまいます。編集時にチルトアップやチルトダウンの動きを加えるつもりならともかく、通常の撮影では上下方向に余裕を持ったアングルを心がけて下さい。HD動画が撮影できるカメラの場合は、動画撮影モードにすることでライブビューの表示が16:9に切り替わるので、それを利用するのもひとつの手です。(但しカメラによっては動画モードにすると表示倍率も変化する場合があります。ご注意下さい)

アスペクト比と同時に、アングルを決める際にもうひとつ意識しておきたいのが、センサーの解像度です。解像度に余裕のあるカメラであれば、後処理で疑似的なカメラワークを加えられるように広めの画角を選んだ方が何かと便利ですし、逆に解像度にほとんど余裕の無い10~12MPクラスのカメラであれば、撮影後の修正はできないものとしてより慎重にアングルを決めなくてはなりません。カメラの解像度の余裕については「4Kタイムラプスのためのカメラ選び(3)」にまとめてあります。

アングルが決まってしまえば、あとはそれに合わせてカメラを固定するだけです。インターバルの設定によっては数時間~十数時間に渡って同じアングルを保持しなくてはならないため、カメラが動いてしまわないようにしっかりと固定して下さい。

展望台などの窓越しに撮影をする場合は、固定と同時に映り込みの防止策を講じます。レンズによってはズームやピントの操作で全長が変わるため、映り込み防止で窓ガラスと接するようにカメラを固定する場合は特に注意が必要です。

また、上下に向けた時に自重で勝手に画角が変わってしまうレンズもあるため、そのような場合はテープを貼ってズームリングも(場合によってはピントリングも)固定します。

屋外の撮影では風対策や雨避けが必要になるかも知れません。さらに、夜間~明け方の撮影ではレンズの結露対策が必要になることもあります。このあたりの対策については、タイムラプスと同様に長時間の屋外撮影を行う、天体や星景の撮影を紹介しているサイトに詳しい情報が出ています。気になる方は探してみて下さい。

カメラの固定手段や映り込みの防止策については「撮影前の準備(グッズ篇) 」を参考にして下さい。


窓越しの撮影
ポケット三脚+ラバーフード+穴あき板で窓越しの撮影


4.露出設定とピントの確認

カメラの固定が終わったら、露出を設定し、最終的なピント調整を行います。

普通の写真撮影なら、1枚1枚シャッターを切る瞬間に適正な露出が得られるように設定すればOKですが、タイムラプス映像の撮影では、基本的に同じ露出設定のままでワンカット分、数百枚におよぶ素材を撮り切らなくてはなりません。従って、マニュアル露出の場合は撮影が終了するまでの間の明るさの変化を予測した上で露出を決めることが重要です。

例えば、空が薄曇りの場合。
この先、雲が切れて陽が差しそうであれば、現在の適正露出よりも暗めに設定。
逆にどんどん雲が厚くなりそうであれば、現在の適正露出よりも明るめに設定。
どちらに振れるか判断できないような状況なら、現在の適正露出をそのまま設定。

このように、時間軸で全体を見渡して最もバランスが良くなるように露出を決定します。同時に、ファイルの保存形式をRAWに設定しておくと、多少予想が外れても後処理で十分調整が可能です。

明け方や夕暮れ時など、明るさが大きく変化するようなシチュエーションでは、時間軸で全体を見渡して最適な露出を設定しても、明るさの変化がセンサーの許容範囲を超えてしまうことがあります。このような場合は、前後の変化を切り捨てて、明るさの変化がセンサーの許容範囲に収まるように短時間での撮影にするか、またはAE(自動露出)を使うことになります。AEを使う際の注意点などについては「4Kタイムラプスのためのカメラ選び(2) 」や、「撮影前の準備(カメラ篇)」の後半「テスト撮影 5.AE(自動露出)のチェック」あたりをご覧下さい。

なお、最新のカメラの中には、インターバル撮影の際に時間軸のつながりを意識したAE制御を行ってくれる機種(Nikon D810 など)もあります。こういったカメラをお持ちの場合は、積極的にAEを使用しても良いと思います。

露出の設定が完了したら、最後にピントの最終調整を行います。特に窓越しの撮影などでレンズが窓ガラスに接しているような場合は、設定のためのボタン操作などで微妙にピントが変化してしまうことがあります。撮影開始の直前には、必ずピントの確認を行うようにして下さい。


5.撮影

露出設定とピントの調整ができたら、最後にもう一度アングルを確認し、事前の計算で決めておいた時刻を待って撮影を開始します。

一旦撮影が始まってしまうと、あとは終了予定時刻まで特にやることはありません。読書をするもよし、ぼーっと空を眺めるもよし。他の人の邪魔にならないように過ごして下さい。20~30分も経つと待つのにも飽きてきて、ファインダーをそっと覗いてみたりすぐ近くで液晶画面を確認したくなったりもしますが、何かの拍子にカメラに触れてアングルがズレてしまわないとも限りません。カメラにはなるべく近づかないようにしましょう。

1テイク分の撮影が終わって、そのまま次の撮影に移る場合は、メモリーカードとバッテリーの残量チェックを忘れずに。また、人間の目ではほとんど変化を感じていなくても、前のテイクとは被写体の明るさが変わっていることもあるため、露出設定も再確認します。メモリーカードやバッテリーを交換したり、露出などを変更した直後は、意識がそのことだけに向いてしまい、たまにピントや画角が微妙にズレていることに気付かないまま次の撮影を始めてしまうことがあります。注意しましょう。


とりあえず、基本的な撮影の手順はこんなところでしょうか。
次回は、編集の前準備についてまとめる予定です。

2014年6月17日火曜日

撮影前の準備(リサーチ篇)


写真でも映像でも、撮影の計画を立てるということは「何を(被写体)」「いつ(時間)」「どこで(場所)」撮るのかを決めることに他なりません。もちろん細かく見ていくと、「どうやって(手法)」「何を使って(機材)」「どのように(演出)」…などいろいろな切り口がありますが、今回は基本になる「何を、いつ、どこで」の3つの視点から撮影前のリサーチについてまとめてみたいと思います。


何を(被写体)

写真や映像を撮る場合、一般的にはこの「何を(被写体)」が既に決まっていて、「だから写真や映像を撮る」とつながることがほとんどだと思います。「子供を撮る」「ペットを撮る」「旅先の風景を撮る」「電車を撮る」などなど。被写体が決まっていれば「いつ」や「どこで」でそれほど悩むこともありません。

しかし4Kタイムラプス映像の場合は、「何を」の部分が被写体ではなく「4K映像を」や「タイムラプス映像を」になっている人が多いのではないでしょうか。「とりあえず4Kタイムラプス映像を撮ってみたい。でも何(被写体)を撮るのかはまだ決めていない」という状態。もしあなたがそうであれば、まずは被写体=撮影する対象を探さなくてはなりません。

ご存じのように4K映像は面積比でFull HDの4倍の解像度を持っています。その分「従来よりも細かいところまで見える」という利点(場合によっては難点)があります。また、タイムラプス映像は「時間圧縮」という大きな特徴を持っています。そのため、普通の映像とはちょっと違う尺度で被写体を選ばなくてはなりません。もちろん習うより慣れろの精神でいろいろと試してみて「4Kタイムラプス向きの被写体」を見つけるのも楽しいのですが、何時間もかけて撮ったカットが軒並みNG!みたいなことが続くとさすがに軽く凹みます。なので、どんな被写体が向いていて何が向いていないのか、事前のリサーチでイメージを掴んでおくことが大切になります。

4Kタイムラプスに「向いている」被写体はYouTubeVimeoなどの動画サイトでいくらでも探せるので、ここでは撮影を不発に終わらせないためのヒントとして、これまでの残念な経験を基に「あまり向いていないもの」と「向いてはいるけど面倒なもの」をいくつか挙げてみます。


 【あまり向いていないもの】

  ・海や湖などの水面
  ・屋外の草や木
  ・画面を横切る人や乗り物
  ・車窓からの風景


タイムラプス映像の被写体選びの基本は「ゆっくり動くもの」を見つけること。例えば時計の針のように、時間を圧縮することで初めて動きが見えてくるような被写体が理想的です。なので逆に「普通の速度で動くもの」は邪魔になることが多々あります。

風を受けて不規則に揺れる水面や草木は、大抵の場合チラチラと動く目障りな存在にしかなりません。それどころか、細かく動くことでその部分がブレて見え、4Kならではの解像感もスポイルしてしまいます。例えば今回のサンプルムービの冒頭の3カット。それほど風は強くないのですが、水面の細かい波や草木の動きが邪魔なものに感じられます。

同様に、画面を横切る人や乗り物があるような場合も注意が必要です。風による揺れとは違って方向性のある連続した動きなので、カメラから離れていれば被写体として問題なく成立するのですが、これがカメラのすぐ目の前、2~3コマ程度でフレームを横切ってしまうような位置にある場合は、動きの連続性が薄くなる上に画面に占める面積が大きいため、人や車が突然現れていきなり消えるような唐突感だけが残ることになります。サンプルムービーの中では、雷門や昼間の浅草寺のカット。画面の奥に大きな目標物があるためにまだ救われていますが、それでもチラつく感じは否めません。

被写体との距離

車窓からの風景は速度が問題になります。1秒インターバルで撮影した素材を30Pで仕上げた場合、時間圧縮率は30倍。カメラを積んだ車両の移動速度をゆっくり目の30km/hとしても、仕上がりのスピードは900km/h。音速に近い速度で地上を疾走!と考えるとちょっと楽しそうですが、実際のところは余程条件に恵まれない限り、目まぐるしく変わる風景や小刻みな揺れのせいで、見ていて非常に疲れる映像になります。速度が遅くてカーブも揺れも少ない乗り物なら…ということで現在いろいろとテスト中ですが、それについては後日あらためてレポートしたいと思います。


 【向いているけど面倒なもの】

  ・動きのない物や風景
  ・群衆や車群
  ・星空


まるで動きのない物や風景でも、太陽の位置によって影が伸びたり、それすら無い場合でも被写体の代わりにカメラ自体を動かしたりすることで、静止画ではなく映像に見えるように撮影することは可能です。影の変化などはタイムラプスならではの表現ですし、カメラの移動も「4K動画が撮れないカメラで4K映像を作る」という意味ではひとつの正しい答えです。しかし、それらの撮影にはそれなりの時間や手間が掛かります。影の動きをしっかりと見せるには最低でも2~3時間の撮影が必要で、その間、雲が掛からずに太陽が出続けていてくれなくてはなりません。カメラ自体をゆっくりスムーズに動かすには専用のクレーンやドリー(台車)を用意する必要があります。もちろんそういった準備や試行錯誤も含めてタイムラプスの醍醐味ではあるのですが、最初のうちはもう少し動きのある被写体を選んだ方が無難です。

群衆や車群については、4K解像度になることで人間の顔や車のナンバープレートが従来よりもはっきりと識別できてしまうという問題を含んでいます。家族や仲間内だけで楽しむ映像であればそれほど神経質になる必要はありませんが、YouTubeなどを通じて不特定多数の方に公開する映像は、肖像権や個人情報などの法律上の解釈以前に、制作者のマナーとして顔やナンバーを識別できないように修正しておく必要があると考えます。顔認識などを使って全自動で修正を加えてくれるアプリケーションがあってもよさそうなものですが、とりあえず見当たらなかったので(あれば是非教えて下さい)今回のサンプルムービーでは全て手作業で修正を行いました。雷門、浅草寺、新宿、渋谷の各カットで、ひとコマづつ修正してはTIFFで書き出すという作業をおよそ1,200枚、丸2日がかりです。仕上がりの品質には何ら関係しない虚しい作業になるので、被写体選びの段階で回避できるのであればそれに越したことはありません。この“解像度が良すぎる問題” は、今後4Kや8Kが普及して行く過程で様々な手間やトラブルを生み出しそうな予感がします。

星空(星景)については、相応の機材と経験、撮影技術が必要です。撮影場所や日時の選定からノイズ対策、レンズの結露の予防など、「星景写真」をキーワードに検索をかけるとさまざまな情報が得られるので、まずは知識の習得から始めて下さい。既に知識と経験をお持ちの方は、その技術と手元の機材を活かして是非4Kタイムラプスにチャレンジしてみて下さい。


いつ(時間)

被写体さえ決まってしまえば、その時点で「いつ」「どこで」についてもある程度イメージが出来上がっていると思います。あとはそのイメージを実際の情報と照らし合わせて、撮影を行う具体的な時間と場所を決定します。場所の方が先に決まることもありますが、ここではまず「いつ」について考えてみます。

タイムラプス映像の撮影では、数分~数時間後にレンズの前で起こることを予測した上で、その予測に基づいてカメラをセットし、インターバルの秒数などから逆算した適切なタイミングで撮影を始めなくてはなりません。何かが起こり始めてからカメラを回しても大抵の場合は手遅れです。従って「いつ何が起こるのか」という事前のリサーチが非常に重要になってきます。

例えば日の出や日没、月の動きや影の動きを撮りたいのであれば、以下のようなサイトで時刻や位置の情報を入手して、それらの情報を基に「いつ」を決定します。


 
計算例


もちろん、自然だけでなく人工物についての情報も役に立ちます。例えば東京の夜景を撮影するなら、以下のような情報をチェックしておきます。



 
他にも、電車や船、飛行機などの運行時刻や、遊園地などの営業時間、霧や雲が晴れる時刻(過去の統計や天気図から推測)、撮影場所の制約(XX時以降立ち入り禁止)等々、撮影の内容に合った情報を事前に集め、それらに基づいて結果を予測しながらスケジュールを組めば、タイムラプス映像の撮影でありがちな「ずっと撮っているけど何も起こらない」や「撮影を止めた途端に面白い動きが」という情けない状況に陥る確率もぐっと減らせるのではないかと思います。


どこで(場所)

撮影場所については、端的に言ってしまうと「その場所で撮影できるのか?」というリサーチがメインになります。

これまでにも何度か書きましたが、ビルの展望台や景勝地では三脚の使用が禁止されている所が少なくありません。商業施設や美術館、博物館、歴史的建造物などでは撮影行為そのものを禁止にしている所もあります。三脚の使用や撮影行為が禁止されている背景には、主に以下のような理由が挙げられます。

  ・通行人や他の利用者の邪魔になる
   (展望台、商業施設、道路、公園など)

  ・建物や展示物に損傷を与える可能性がある
   (美術館、博物館、歴史的建造物など)

  ・著作権や肖像権を侵害する恐れがある
   (美術館、著名な建造物など)

  ・望遠レンズによる盗撮やのぞき行為の防止
   (一部のビルの展望室など)

  ・私有地のため
   (施設の敷地内など)

撮影しようとしている場所がこれらのいずれかに相当しそうな場合は、三脚やその他のカメラ固定器具の使用および撮影そのものの可否について、事前にしっかり調べておく必要があります。一例として、今回のサンプルムービーを撮影するにあたって、事前リサーチによって撮影を断念した場所を挙げておきます。三脚の使用は禁止でもポケット三脚等は使用可の所もありますが、今回は三脚禁止が判明した時点で撮影場所の候補から外しています。

  東京都庁(三脚禁止) ※ポケット三脚もNG
  文京シビックセンター(三脚禁止)
  六本木ヒルズ スカイデッキ(三脚禁止)
  聖路加ガーデン(三脚禁止)
  丸ビル(三脚禁止)
  アイ・リンクタウン(三脚禁止)
  お台場海浜公園(三脚禁止)
  貿易センタービル(インターバル撮影禁止)
  船の科学館(本館休館中)
  新宿NSビル(展望ロビー廃止)

また、リサーチによって撮影や三脚の使用は可でもカメラの設置が難しかったり希望通りの眺望が得られないことが判明する場合もあります。窓が遠くて映り込みが消せないとか、撮りたい方向に面していない、などなど。例えば今回は以下の4か所がそうでした。

  東京スカイツリー
  新宿野村ビル
  新宿センタービル
  キャロットタワー

撮影という行為は、多かれ少なかれ周囲に迷惑を及ぼします。特に三脚や一眼レフを使った(一般の人から見れば)大掛かりな撮影や、同じ場所に長時間居座ることになるインターバル撮影では、事前のリサーチによる場所や時間の選定をしっかりと行い、周囲への迷惑を最小限に留めるようにして下さい。
 
 

2014年6月7日土曜日

撮影前の準備(カメラ篇)

 
今回は「撮影前の準備(カメラ篇)」として、4Kタイムラプス映像の撮影に向けたカメラのセットアップについてまとめます。


ファームウェアの確認

まずは手始めに、カメラのファームウェアを確認しましょう。

ファームウェアというのは、電子機器の動作を制御するためにその機器に組み込まれたソフトウェアのこと。もちろんデジタルカメラの中にも入っています。そしてこのファームウェア、不具合を修正したり新しい機能を追加するために、バージョンアップされることがあります。メーカーのWEBサイトの「サポート」もしくは「ダウンロード」のページを覗くと、機種ごとのファームウェアの情報が公開されているので、必要に応じてダウンロードと更新作業を行って下さい。

 


例えば今回のサンプルムービーの撮影で使用したカメラ、LUMIX G6 では、フォーカスリングが付いていないレンズ LUMIX G VARIO 12-32mm/F3.5-5.6 を装着した場合、当初はオートフォーカスのみでマニュアルでのフォーカス操作は出来ませんでした。しかし、その後のファームウェアの更新によって現在はフォーカス操作が可能になっています。このように使い勝手が大きく変わるバージョンアップもあるため、ファームウェアは必ず確認するようにして下さい。ユーザー登録をしておくとお知らせのメールが届くので便利です。



タイムラプス映像の撮影に向けた設定

ファームウェアの確認/更新が終わったら、次はカメラの設定です。

設定できる項目は多岐に渡りますが、ここでは一般的なことは割愛して、タイムラプス映像を撮影する上で注意しておきたい点のみを取り上げます。
 

・フォーカスモード

マニュアルフォーカス(MF)に設定。

フォーカスアシスト機能(ピントが合っている部分が強調表示されたり見やすいように画面が拡大されたりします)が付いている機種は、併せて設定しておきます。
 
フォーカスモードメニュー LUMIX G6
フォーカスモードレバー Nikon D800E
 
 

 
・露出モード

マニュアル露出モード(M)に設定。

同時に、露出を決める「絞り」「シャッター速度」「感度」の設定方法と、カメラに内蔵されている露出計の表示と使い方、測光モードについても確認して下さい。最初は少し複雑&煩雑に感じるかも知れませんが、安定した映像を得るための基本(※)です。マニュアル露出モードに慣れて露出調整の感覚がつかめたら、状況に応じて「絞り優先AE(A/Av)」を併用していきます。 ※ 4Kタイムラプスのためのカメラ選び(2)参照

露出モード LUMIX G6
露出モードボタン Nikon D800E
測光モードメニュー LUMIX G6
測光モードダイヤル Nikon D800E
 


・ホワイトバランス(WB)

オート(AWB)以外 に設定。

ホワイトバランスとは、撮った写真の色合いを決定する調整項目。露出モードと同様、オートで撮ると映像としてつないだ時に色調が安定せずにチラついて見える可能性があります。RAW記録の場合はざっくりと「太陽光」または「曇り」あたりに設定(後で自由に調整できます)、JPEG記録の場合は仕上がりのイメージに近くなるように調整して下さい。なお、ホワイトバランスは「通常使う設定」を自分で決めておくと各カットの色合いに統一感が出てスッキリとした映像に仕上がります。

ホワイトバランスメニュー LUMIX G6
ホワイトバランスボタン Nikon D800E
  


・記録形式

RAW(又はJPEG)に設定。

後処理での調整幅を確保するため、RAW形式が選べるカメラはRAWを、それ以外のカメラはJPEGの最高画質に設定して下さい(JPEG以外にも選択肢がある場合は画質が良い方を選択)。ちなみにRAWで記録する場合は「RAW+JPEG」設定にならないように注意。RAW+JPEGは同じ画像をRAWとJPEGの両方の形式で記録するため、撮影可能枚数が減る上に記録にも余計な時間が掛かってしまいます。

記録形式メニュー LUMIX G6
 


・手振れ補正

必ず OFF に設定。

手振れ補正が働いたままだとひとコマひとコマの位置が微妙にズレることがあるので要注意です。

 
手ブレ補正メニュー LUMIX G6
 


・ノイズリダクション/歪み補正/その他補正

とりあえず全て OFF に設定。

短い間隔でシャッターを切る場合に補正処理が間に合わなくなってコマ落ち(画像が記録できていない)が発生することがあります。RAWで記録しておけば大抵の補正は現像時に追加できるので、基本的には全てOFFでの撮影をお勧めします。

補正メニュー Nikon D800E



・インターバル撮影設定

ここまでの設定がひと通り出来たら、最後にインターバル撮影の設定と操作方法を確認します。インターバル撮影機能が内蔵されているカメラでは、メニューの呼び出し方、撮影間隔や枚数の設定方法、撮影開始までの手順など。レリーズリモコンで対応する場合は、カメラにリモコンを接続して、同様に各種設定と撮影開始までの手順を確認して下さい。

インターバル撮影メニュー LUMIX G6
インターバル撮影メニュー LUMIX G6
 


テスト撮影

設定が完了したらいよいよインターバル撮影機能を使ったテスト撮影です。例えば下記のような手順でカメラとレンズの特性をチェックします。
 

1.シャッター速度の誤差(変動)チェック

明るさの変化が少ない場所と時間(屋外なら晴れた日の日中、室内なら蛍光灯やテレビの光の影響を受けない場所)を選んで行います。マニュアル露出モード/絞り解放(F値が最小)/通常使う感度 にセットした状態で、適正露出になるように被写体の明るさとシャッター速度(以下SS)を調整して、数秒程度のインターバルで10枚ほど撮影。

撮影した画像の明るさが全部変わらなければ問題ありませんが、もし1枚1枚の明るさが細かく変わるようであれば、シャッターの動作にバラつきが発生している可能性があります。SSの設定をいろいろと変えて(絞りは解放のまま。適正露出になるように被写体の明るさを調整)テストを行い、特定のSSでのみバラつきが出る場合はそのSSを使わないようにします。全域でバラつきが出る場合は(程度にもよりますが)メーカーのサービスセンターに相談して下さい。

電子シャッターが使えるカメラでは、メカニカルシャッターと電子シャッターの両方でテストを行います。


2.絞りの誤差(変動)チェック

このチェックも、明るさの変化が少ない場所と時間を選んで行います。マニュアル露出モード/上のチェックで問題のなかったSS/通常使う感度 にセットした状態で、適正露出になるように絞りを調整(解放以外のF値を選択)して、数秒程度のインターバルで10枚ほど撮影。

撮影した画像の明るさが全部変わらなければ問題ありませんが、もし1枚1枚の明るさが細かく変わるようであれば、絞り羽根の動作にバラつきが発生している可能性があります。このチェックもF値を変えて繰り返しテストを行いますが、SSの場合とは異なり、絞りのバラつきの場合はF値が大きくなればなるほど目立つようになるのが一般的です。従って「どのF値までなら許せるか」を見極める必要があるのですが、確実なところは実際に映像にしてみないと判別できません。とりあえずは「明らかにバラつきが目立たないF値」の範囲をチェックし、それがあまりにも低い(解放から軽く絞っただけで目立つ)ようであれば、そのレンズは使わない(又はサービスセンターに相談)か、絞り羽根の影響が出ない解放限定で使うようにして下さい。

なお、「絞り環」(レンズ側で絞りを調整するためのリング)が付いたレンズの場合は、カメラと設定によっては絞り環を使ってレンズ側でF値を設定(絞り羽根を固定)することでバラつきの発生を回避できることがあります。絞りの設定は撮影した素材の解像感にも関係してくるため、特に4K仕上げの場合は絞りが安定したレンズを使いたいものです。


3.撮影可能間隔の割り出し

デジタルカメラでは、1枚の写真の撮影が完了するまでに、実際にシャッターが開いている時間に加えて、シャッターを開くまでの準備や、撮影後にイメージセンサーから取り出したデータを変換したり記録したりといった内部処理の時間が必要になります。そのため、インターバル撮影を行う場合は「シャッター速度 + 内部処理時間」以上の撮影間隔を空けなくてはなりません。

問題は、この「内部処理時間」がハッキリしないこと。カメラの機種はもちろんのこと、各種設定やメモリーカードの種類によっても異なるため、実際の使用環境に合った値を自力で割り出しておく必要があります。

本番で使う予定のメモリーカードをカメラに装着し、各種設定も済ませた上で、インターバルを1秒に設定。とりあえずSSを1/2秒にセットして正常な間隔で撮影出来るかどうかをチェックします。30枚ほど連続で撮影して問題がなければSSをより長く、問題あり(一部もしくは全ての撮影間隔が2秒になってしまう)の場合はSSをより短くセットしてチェックを繰り返していき、最終的に「問題なく撮影できた中で元も長いSS」を1秒から引いた値がその使用環境で必要な「内部処理時間」ということになります。もしSSを1/30秒程度にまで上げても正常な間隔で撮影できない場合は、インターバルを2秒に設定し直して再度1/2秒からチェックを行って下さい。当然ですがこの場合は正常な撮影間隔が2秒、問題がある場合は4秒、そして問題なく撮影できた中で最長のSSを2秒から引いた値が「内部処理時間」になります。

本番の撮影時には「使用するSSと テストで割り出した「内部処理時間」の合計」が「インターバル撮影機能で設定する撮影間隔」よりも長くならないように調整します。特に日没時に絞り優先AEを使う場合は、暗くなるにつれてSSが遅くなるので慎重な調整が必要です。

「内部処理時間」は記録形式の設定(RAW/JPEG)やノイズリダクションの有無、歪みなどの補正の有無、使用するメモリーカードなどによって大きく変動します。これらの設定を変えたり新しいカードを使う場合は、その都度テストを行って時間を割り出しておくことをお勧めします。


4.バッテリーの持続時間(撮影可能枚数)の確認

本番の撮影に近い形で、連続してどれ位の枚数が撮影できるのかを確認します。もちろん使用環境や設定で持続時間は変わりますが、それでも大体の目安を知っておくと撮影中の安心感が違います。特に新品のバッテリーの場合は使い始めの1~2回は性能が十分に発揮できないことがあるため、慣らし運転も兼ねて本番前に複数回のチェック行っておくと万全です。


5.AE(自動露出)のチェック

せっかくなので、最後にAEのチェックも行っておきましょう。

日没または夜明けの、明るさが大きく変化する時間帯を選んで、本番撮影のつもりで2時間程度の撮影を行います。インターバルを15秒に設定すると、撮影枚数は約500枚。上の「バッテリーの持続時間(撮影可能枚数)の確認」を兼ねてもいいかも知れません。

使用する露出モードは「絞り優先AE(A/Av)」、F値は絞り羽根による誤差を出さないために最小(解放)にセット。測光モードはメーカーによって名称が異なりますが、スポット測光の反対側、広く全体的に測光するモードに合わせて下さい。感度は、明るい時にシャッター速度が上限を超えずに、また暗くなってからも概ね10秒以内に収まる値に。明暗の差が激しいと適切な感度を選んでも収まらなくなる可能性があるので、そこそこ明るい夜景(遠景)が見える場所が理想的です。カメラのすぐ前を人やクルマが頻繁に横切ったり、目の前に明るい街灯があるような所はAEが必要以上に反応してしまうので今回のテストでは避けて下さい。

撮影が終わったら、編集ソフトを使って実際に映像にしてみるか、連続した何枚かの写真を比較して、明るさにバラつきが無いかを確認します。「シャッター速度の誤差(変動)チェック」では特に問題が無かったにもかかわらずバラつきが目立つようであれば、タイムラプス映像の撮影にはあまり向いていないAEかも知れません。条件を変えて繰り返しテストを行うか、マニュアル露出モードで何とかする方法を検討しましょう。逆にほとんど違和感が無ければ、積極的にAEが使えるカメラかも知れません。

AEはその時々の光の状況によって結果が変化するので、たまたま良かった/悪かった ということもあるため1回だけの結果では何とも判断しづらい所ですが、少なくとも「何が原因でこの結果になったのか」ということを考える材料にはなると思います。




少し長くなりましたが最後までお読み頂きありがとうございました。
次回は撮影前の準備のラスト、「リサーチ編」をお送りする予定です。
 
 
 

2014年6月3日火曜日

撮影前の準備(グッズ篇)


さて。タイムラプス用のカメラは用意できたでしょうか?
それでは早速撮影に…といきたいところですが、その前に準備をしっかり整えましょう。

という訳で、今回は「撮影前の準備(グッズ篇)」をお送りします。


メモリーカード

写真の撮影でもビデオの撮影でもタイムラプス映像の撮影でも、まず必要なのが撮影した画像を記録するためのメモリーカード。使用するカメラの規格に合ったものを用意しましょう。

タイムラプスの場合、まとまった枚数の写真を連続して撮影/記録しなければならないため、1テイク毎に残量が気になってしまう容量の小さなカードよりも、交換回数が少なくて済む大容量のカードの方が向いています。ちなみに30Pの映像の場合、10秒分(300枚)のRAWデータを記録するために必要なカードの容量は、今回使用した LUMIX G6(16MP)で約5.5GB、D800E(36MP)は約12.5GB(いずれも実測値)。64GBのカードを用意すれば、5~10テイク分をまとめて記録できる計算になります。

転送速度に関しては、高速連写をする訳では無いので極端に遅いものでなければ大丈夫です。

CFカードとSDHCカード



三脚等のカメラ固定器具

タイムラプス映像の撮影に無くてはならないのが、撮影の間カメラを固定しておくための器具。カメラの重量に見合った、しっかりとしたものを選んで下さい。

まずは三脚。極端な話シャッターが開いている間だけカメラを固定できればいい普通の写真撮影と違って、タイムラプスでは数分~数時間に渡ってカメラのポジションを一定に保つ必要があります。

なのでカメラを載せただけで脚がたわむような軽量三脚はNG。ムービー用のゴツい三脚とまでは言いませんが、写真用の三脚の中でもある程度の重さがあって剛性が高いものを選ぶようにして下さい。新品だとそれなりにいい値段がしますが、実用品と割り切って中古で探すと掘り出し物が結構あります。また、知人友人親戚一同に片っ端から声を掛けるとかなりの確率で物置や押し入れから「もう使っていない三脚」が出てきます。有難く使わせて頂きましょう。

前回も書きましたが、ミラーレスやコンパクトデジカメなど、カメラが軽くて小さい場合は三脚以外の選択肢もあります。

ミニ三脚やポケット三脚と呼ばれるジャンルでは、Manfrottoの「POCKET三脚」JOBYの「ゴリラポッド」 などが定番です。高さはありませんが、その分、下手な三脚よりも遥かに安定します。タイムラプスでは風景が主体になることが多いため、設置する場所を見つける手間を厭わなければ、全てのカットをこれひとつで撮ることも十分可能だと思います。

Manfrotto POCKET三脚

その他、ガラス越しの撮影に最適な吸盤式のマウントや、柱や手すりなどにカメラを固定できるクランプタイプのマウントなど、使える場所は限定されますが便利な固定器具が色々と出ています。比較的安価な製品が多いので、用途に合わせていくつか揃えておくと何かと役に立ちます。

吸盤マウント
 
なお、これらの固定器具を使って高い場所にカメラを設置する場合は、万が一の落下に備えて必ず “命綱” を付けるようにして下さい。100円ショップなどで売っているアクセサリー用のカラビナと普通のヒモの組み合わせで十分です。

カメラ用命綱
カメラ用命綱



予備バッテリー

撮影枚数が嵩むので、最低でも1個は用意しておきたいところ。USB給電に対応したカメラであれば、汎用のモバイルバッテリーという手もあります。また一部のデジタル一眼レフやミラーレスには、バッテリーや乾電池を追加搭載できる「バッテリーグリップ」と呼ばれるオプションもあります。自分のカメラや撮影スタイルに合わせて選んで下さい。

ちなみにタイムラプスではAFや内蔵フラッシュを使うことが無いため、極端な長時間露光でもしない限りはメーカーが公表している撮影可能枚数よりもかなり多く撮影できることがほとんどです。予備バッテリーは最初にまとめて買うよりも、様子を見ながら買い足していくことをお勧めします。

予備バッテリー



映り込み防止グッズ

タイムラプスの場合、高所から撮影する(したくなる)ことが少なくありません。今回のサンプルムービーでもほぼ半数のカットが高所からの撮影です。「××と煙は高い所が好き」という理由が当てはまるのかどうかという議論はさて置き、これには「目の前をチラチラと動き回る余計なものが無い」「空や地表の変化を広く大きく捉えられる」「タイムラプスと併せて使うことの多いミニチュア効果が出しやすい」などの真っ当な理由があります。そして、そんな高所からの撮影で邪魔になるのが「窓ガラス」です。

山の上や自宅のベランダならともかく、高層ビルやタワーの展望台ではガラス越しに風景を見ることがほとんどです。屋上やテラスに出られる建物もありますが、大抵は柵や構造物が邪魔になってしまい撮影には不向きです。そんな訳で仕方なくガラス越しに風景を撮影することになるのですが、何も考えずにそのまま撮ると、100%に近い確率で「映り込み」(撮影者や室内の照明などがガラスに反射して写ってしまうこと)が発生します。

この映り込みを無くしたり軽減するために用意しておきたいのが、映り込み防止グッズ。以下に代表的なものを挙げてみます。


・ラバーフード

ラバー素材で出来たやわらかいレンズフード。このフードを装着したレンズをガラスに押し付け、フードの先端とガラスの間に隙間が出来ないように固定して使います。レンズそのもの以外の映りを全てカットできるため効果は絶大ですが、フードの変形範囲を超えてガラスとの間に隙間が出来ると途端に効果が激減します。またギリギリまで変形させるとフードの端がフレームに入ってしまうこともあるため、ガラスに対して斜めにカメラを向けるような場合にはあまり向いていません。但しそのような場合でも、セットアップ時にレンズの縁でガラスに傷をつけないためのバンパーとして装着しておくことをお勧めします。

ラバーフード
ラバーフード


・穴あき板

レンズ先端(フードを付ける場合はフード先端)と同じ大きさの穴を開け、片面を黒い無反射の素材や塗料で覆った板。穴から少しだけレンズを突き出して、カメラを向けている方向の一辺がガラスに密着するようにセットします。A4程度の大きさでも意外と効果はありますが、カメラと一緒に持ち歩くには少々邪魔くさいところが難点です。

穴あき板
穴あき板


・穴あきカーテン

穴あき板のカーテン版。自由に曲げられるので調整幅も広く持ち運びにも便利ですが、吸盤やテープを使ってガラスに直接固定するため、傍から見るとちょっと大がかりな感じに。使いたい場合は事前に許可を得ておいた方が無難です。

穴あきカーテン


・黒パーマセル

無反射の黒い紙でできた粘着テープ。ラバーフードとガラスの隙間を埋めたり、穴あきカーテンの固定に使ったり、あると何かと便利です。カメラ屋さんで入手可能。

黒パーマセル


なお、窓ガラスには飛散防止やUVカットのためにフィルムが貼られていることがあります。機材等を当てないことはもちろんですが、不用意にテープを貼ったり吸盤を付けたりすると剥がす際にフィルムを傷付けてしまうことも無いとは言い切れません。映り込み対策は万全で臨みたいところですが、状況によっては諦めることも肝心です。また、後日まとめるつもりですが、高層ビルなどの展望台の多くが三脚を使った撮影を禁止しています。撮影に際しては念入りな事前調査を行うようにして下さい。



撮影時間の計算表

撮影間隔毎に、一定の長さの動画素材を撮るのに必要な時間をまとめた表です。今回のサンプルムービーの撮影では、「30P仕上げでワンカット10秒」を基準に下のような表を作ってカメラに貼っていました。単純な撮影終了時間の算出の他、「カット頭から5秒後に日没を迎えるには何時何分から撮り始めたらいいのか」などの計算にも使えて便利です。

撮影時間の計算表

もちろん、暗算が得意な人には必要ありません。



快適グッズいろいろ

タイムラプスの場合、私有地でもない限り一旦撮影を開始すると長時間に渡ってカメラに付きっ切りになってしまいます。それに備えて、椅子や本、食べ物や飲み物、冬場なら上着やカイロなど、現地で快適に過ごすためのグッズを用意しておきましょう。




次回は「撮影前の準備」の2回目、「カメラ篇」と題してカメラまわりの準備についての話をお送りする予定です。
 

2014年5月27日火曜日

4Kタイムラプスのためのカメラ選び(5)


4Kタイムラプスのためのカメラ選び、今日はサンプルムービーの撮影で実際に使用した機種についてまとめます。

今回制作したサンプルムービーでは、3台の市販カメラを使用しました。

  ・Canon EOS 7D
  ・Nikon D800E
  ・Panasonic LUMIX G6

早速ですが上から順に見ていきましょう。


Canon EOS 7D

今回のサンプルムービーを制作するにあたって、テストを含めた初期段階で使用していたカメラ。センサーサイズはAPS-C、有効画素数18MP。レンズは全カット EF-S18-200mm F3.5-5.6 IS を使用。

Canon EOS 7D + タイムラプス用スライダー

EOS 7Dで撮影したカット
EOS 7D で撮影したカット



【4Kタイムラプス的にGOODな点】

 ・手頃な解像度(18MP 5,184×3,456 ピクセル)

【4Kタイムラプス的にBADな点】

 ・インターバル撮影機能なし(リモコンで対応)
 ・やや大柄で重い
 ・AE(自動露出)が少々過敏?


発売から少々時間が経過していますが、デジタル一眼レフの中でも中上級クラスに位置するカメラです。4Kタイムラプス映像の撮影においても基本性能に不足はありません。解像度とファイルサイズのバランスも丁度良い感じです。

このクラスのカメラは信頼性も高く安心して撮影に臨めますが、その信頼性と引き換えに大きくて重くなるところが難点でしょうか。三脚のみの使用であれば特に問題はありませんが、上の写真のようにスライダーや回転台を使う場合は少々気を遣います。また今回、この機種の特性なのか個体差なのかは不明ですが、絞り優先AEで撮影した際に露出がかなりバラつくことがありました。1枚1枚の写真として見れば異常という程では無いのですが、そのまま動画にするとちょっと気になるレベル。日没や日の出を跨ぐ撮影などでどうしてもAEを使いたい場合は事前に十分なテストをしておくことをお勧めします。


Nikon D800E

2014年5月現在、SONY α7Rと並び35mmフルサイズ以下のクラスで最も高解像度のイメージセンサーを持つカメラ。センサーサイズは35mmフルサイズ、有効画素数36MP。レンズは AF-S NIKKOR 70-200mm f/4G ED VR を使用。今回は疑似的なカメラワークのテストとして2カットのみ投入。

Nikon D800E

D800Eで撮影したカット
D800E で撮影したカット



【4Kタイムラプス的にGOODな点】

 ・8Kに迫る余裕の解像度(36MP 7,360×4,912 ピクセル)
 ・インターバル撮影機能内蔵
 ・画質面で有利なフルサイズセンサー

【4Kタイムラプス的にBADな点】

 ・速度的にも容量的にもPCに厳しいファイルサイズ
 ・大柄で重い
 ・お値段


価格的な面も含め、タイムラプス主体で考えると全体にオーバースペックであることは否めません。解像度が高い分ファイルサイズも大きいので、後処理を行うPCにもそれなりに高い性能が求められます。またファイルと同様にボディも大きく重いので、取り回しも良好とは言えません。

しかし、8Kに迫る解像度は後処理でのカメラワークの自由度を大きく広げてくれます。普段は他のカメラを使い、後処理で大きな動きを入れたいカットにのみ投入といった使い方ができれば理想的ですが…後はお財布との相談。ちなみに同じセンサーでもα7Rはミラーレスのため、D800/D800Eと比べるとそこそこ安く入手可能です。


Panasonic LUMIX G6

今回、4Kタイムラプス撮影用に新規購入したカメラ。センサーサイズは4/3、有効画素数16MP。レンズは全カット LUMIX G VARIO 12-32mm/F3.5-5.6 を使用。

Panasonic LUMIX G6

LUMIV G6で撮影したカット
LUMIX G6 で撮影したカット



【4Kタイムラプス的にGOODな点】

 ・必要充分な解像度(16MP 4,608×3,456 ピクセル)
 ・インターバル撮影機能内蔵(連続再生機能付き)
 ・電子シャッター搭載
 ・バリアングル液晶
 ・小型軽量
 ・比較的安価

【4Kタイムラプス的にBADな点】

 ・暗所ではやや辛いセンサー


ここまで挙げてきた「4Kタイムラプスのため」に欲しい要素をバランスよく持っているカメラです。16MPの解像度は後処理でカメラワークを追加するには若干狭く感じますが、サンプルムービーを見て頂けば分かる通り、余裕のある上下方向(チルト)を中心に退屈させない程度の動きは作れます。電子シャッターを使えば、静かに、そしてシャッターの寿命を気にすることなく長時間の撮影が可能。バリアングル液晶や電子水準器など、アングルを決める際に役立つ機能も豊富です。

難点は、感度を上げたり露光時間を長くした場合に出るノイズの量。使うレンズの明るさ(今回使用したレンズは暗め)にも因りますが、センサーのサイズが小さいこともあって、暗い場所での撮影には限界を感じます。サンプルムービーのような明るい街の夜景であれば問題ありませんが、それ未満の明るさとなるとちょっと厳しいかも知れません。


■ ■ ■


以上3台のカメラで撮影を行った結果、最も強く感じたのは「軽い(小さい)は正義」ということ。

以前にも少し触れましたが、タイムラプス映像の撮影では「カメラをどこにどうやって固定するか」ということが重要になってきます。カメラの設置方法として最もポピュラーな三脚は、往々にして通行の妨げになったり、安定して設置できるスペースがないなどの理由から使える場所が限られてきます。三脚禁止の観光地や景勝地も珍しくありません。そんな時、軽くて小さいカメラであれば三脚以外の方法で保持することが容易になります。


Panasonic LUMIX G6 + Manfrotto ポケット三脚


今回のサンプルムービーの撮影では、LUMIX G6との組み合わせで上の写真のような「ポケット三脚」を多用しました。他にも吸盤やクランプを使ったマウントの活用など、カメラが軽く小さければセッティングの幅が大きく広がります。

そんなことも踏まえて、カメラ選びの結論としては「4/3又はAPS-Cクラスのミラーレス」を一押しにしたいと思います。どうしても夜景や日の出日の入りを撮りたくなるのがタイムラプスの常なので、画素数は欲張らずに14MP~18MP。もしも予算が許すなら、あまり重くならない範囲で明るいレンズと組み合わせてあげて下さい。

もちろん多少の不便は覚悟の上で、本格的に画質や表現の幅を追求するなら35mmフルサイズや高画素機、逆にもっと気軽にコンパクトにということであれば、最近増えてきた1インチクラスのセンサーを積んだ製品なども良いと思います。当たり前のことですが「この1台で全てオッケー!」なカメラは存在しません。自分が何を撮りたいのか、それを撮るには何が必要なのか、をよく考えて選ぶようにして下さい。


と、延々と書き連ねて来た割にはありきたりな結論が出たところで「4Kタイムラプスのためのカメラ選び」は一旦終了。次回は、撮影前の準備についてまとめる予定です。
 

2014年5月22日木曜日

4Kタイムラプスのためのカメラ選び(4)


さて。
カメラ選びも今日で4回目。そろそろ終わりにして次に進みたいところです。


ミラーレスまたはコンパクトデジタルカメラ

ここで、今まで挙げてきた「あったらいいな♪」の内容をもう一度見てみましょう。

  ・マニュアルフォーカス
  ・マニュアル露出
  ・RAW形式での保存
  ・大きめのイメージセンサー
  ・ちょっと余裕のある解像度

この5つの条件をカメラ屋さんで口にすると、もれなく!とまでは言いませんがかなりの確率でデジタル一眼レフを勧められます。

実際、現在販売されているデジタル一眼レフのほとんどが上の条件を満たしています。インターバル撮影機能が無い機種もありますがリモートレリーズ端子が付いていれば問題ありません。明るくて性能の良い交換レンズも揃っています。普通の写真撮影はもちろん、タイムラプス映像の撮影でも存分に実力を発揮してくれることは間違いありません。思わず「これ下さい!」と言ってしまいそうです。

でも。

当然ながらいいお値段がします。そして一眼レフ機の場合、いいお値段のかなりの部分が「光学ファインダー」と「位相差オートフォーカス」のために使われています。詳しい説明はここでは省きますが、ざっくりというと2つとも「一瞬のシャッターチャンスを逃さない」ための機能というか仕組みです。

しかし、「一瞬のシャッターチャンス」よりも「長時間」に意味があるタイムラプス映像の撮影では、この2つが必要になることはほとんどありません。編集のしやすさや仕上がりの画質にも無関係です。さらには、内部の構造が複雑になるため大きくなったり重くなったりというデメリットもあります。そんな「いらないこと」のために余分にお金を払うなら、焼肉でも食べに行った方がいいような気もします。デジタル一眼レフの基本性能の高さは十分に魅力的ですが、ここはひとつ他の選択肢についても検討してみましょう。

ここ数年で急速に勢力を拡大しつつあるミラーレス機は、簡単に言ってしまうとデジタル一眼レフから上の2つを取り除いたもの(※)。その分カメラ本体は小型軽量で構造もシンプル。お値段についても同じクラスのイメージセンサーを積んだ一眼レフと比べると割安です。基本性能も十分に高いので、コストパフォーマンスや扱いやすさという点ではデジタル一眼レフよりもタイムラプス映像の撮影に向いたカメラと言えます。ちなみに「一瞬のシャッターチャンス」への対応力も以前と比べると格段に向上しているため、通常の写真撮影でも不便を感じることはほとんど無いと思います。(※一部、位相差オートフォーカスが使える機種もあります)

そしてさらにお手軽なのが、コンパクトデジタルカメラ。上の5つの条件(特にセンサーサイズ)を満たすのは一部の上位機種に限られてしまうこと、操作ボタンやダイヤル類が少なかったり小さいためにマニュアルでの操作にはあまり向いていないこと、「コンパクト」という割には基本性能が高い機種はそれなりに大きいこと、など、積極的に選ぶにはネガティブな要素も多々ありますが、画質や使い勝手などをある程度割り切って、自分なりの条件に合うものが見つかれば最良の選択にもなり得ます。もちろん、とっつきやすい価格も魅力です。

ちなみにカメラの種別ですが、一般的に「レンズ交換ができて光学ファインダーを持ったデジタルカメラ」をデジタル一眼レフ、「レンズ交換ができて光学ファインダーを持たないデジタルカメラ」をミラーレスと呼んでいます。一眼レフのようなファインダーが付いていても、それが光学式ではなく電子式のファインダー(EVF)ならミラーレスに区分されます。そして「レンズが交換できないデジタルカメラ」がコンパクトデジタルカメラ。ただし一眼レフに近い形や大きさの高倍率ズームレンズ付きコンパクトデジタルカメラについては「ネオ一眼」などと呼んで区別することもあります。実は他にも「コンパクトシステムカメラ」やら「ノンレフレックス」やら、色々な呼び方や区分の仕方があるのですが、ここではごく一般的なものだけにしておきます。


電子シャッター

現在、携帯電話やタブレット端末、トイカメラなどの超低価格帯の製品を除くほとんどのデジタルスチルカメラには、メカニカルシャッター(機械式のシャッター)が使われています。そしてこのシャッターには機械ゆえの「物理的な寿命」が存在します。一般的なデジタルカメラの場合、その相場は概ね10万~20万ショット。プロのフォトグラファーや連写マニアでもない限り、普通に写真を撮るだけならあまり気にしなくても良い数字です。が、タイムラプス映像の撮影ではちょっと事情が変わってきます。

一般的な30pのムービーを例に、メカニカルシャッターが寿命を迎えるまでの時間を計算してみましょう。1秒あたりのフレーム数は30。タイムラプス映像の撮影では、基本的にこの30のフレーム全てに対して1枚1枚写真を撮る、すなわちカメラのシャッターを切ることになります。よって再生時間あたりのシャッター数は30回/秒。

シャッターの寿命を15万回として、この「30回/秒」で割ると答えは5,000秒。だいたい83分の映像素材を撮影した時点でシャッターが寿命を迎える計算になります。60pで仕上げるつもりなら40分ちょっと。NGテイク(タイムラプスの場合「頑張って撮ってみたけど動画にしたらつまらんかった!」という事が割とよくあります)も含めると意外と早く到達してしまいます。もちろん15万回ジャストでシャッターが壊れると決まっている訳ではありませんが、不安要素は少ないに越したことはありません。

そこで注目したいのが「電子シャッター」です。

電子シャッターとは、メカニカルシャッターの働きを電気的に置き換えたもの。動く部分が無いので、物理的な寿命の心配はありません。また、シャッター音がしないので、静かな環境でも気兼ねなく撮影することが出来ます(一定間隔で延々と鳴り続けるシャッター音は意外と耳障りに感じるものです)。さらに、メカニカルシャッターと比べて露光時間の誤差が出にくい(=1枚1枚の写真の露出が安定する)というメリットもあります。

ただし、CMOSイメージセンサーと組み合わせた場合に動きのあるものを撮ると像が歪む(下の写真参照)というデメリットもあります。


LUMIX G6 電子シャッターの歪み比較
メカニカルシャッターで撮影
 
 
LUMIX G6 電子シャッターの歪み比較
電子シャッターで撮影


イメージセンサーの主流がCMOSになって以降、この「歪み問題」から“まともなスチルカメラ”では敬遠されていた電子シャッターですが、最近では歪みを低減する技術もそこそこ進み、状況に応じてメカニカルシャッターと電子シャッターを切り替えて使える製品も出てきました。搭載されている機種はまだまだ限定的ですが、タイムラプス撮影を目的にした場合、電子シャッターが使えるというのはかなり魅力的な選択肢です。


バリアングル液晶/電子水準器

これについてはそれほど気にする必要はありません。ただ、タイムラプス映像の撮影では1テイクに数十分~数時間という時間を要するため、「ちょっとアングルを直してもう1テイク」ということが辛かったり無理だったりすることがほとんどです。撮影中に微妙にカメラが傾いていることに気付いたりするともう最悪。最初から撮り直すか、傾いたままで良しとするかで延々と悩むことになります。なので、アングルを決めるための便利機能は多いに越したことはない!という意味で挙げてみました。


以上、3回に渡ってだらだらとお送りしてきた「絶対条件ではないけれど、あったらいいな♪」的な機能や性能はこれにて終了。次回はサンプルムービーの撮影で実際に使用した機種を元に、カメラ選びのまとめをお送りしたいと思います。