2014年5月27日火曜日

4Kタイムラプスのためのカメラ選び(5)


4Kタイムラプスのためのカメラ選び、今日はサンプルムービーの撮影で実際に使用した機種についてまとめます。

今回制作したサンプルムービーでは、3台の市販カメラを使用しました。

  ・Canon EOS 7D
  ・Nikon D800E
  ・Panasonic LUMIX G6

早速ですが上から順に見ていきましょう。


Canon EOS 7D

今回のサンプルムービーを制作するにあたって、テストを含めた初期段階で使用していたカメラ。センサーサイズはAPS-C、有効画素数18MP。レンズは全カット EF-S18-200mm F3.5-5.6 IS を使用。

Canon EOS 7D + タイムラプス用スライダー

EOS 7Dで撮影したカット
EOS 7D で撮影したカット



【4Kタイムラプス的にGOODな点】

 ・手頃な解像度(18MP 5,184×3,456 ピクセル)

【4Kタイムラプス的にBADな点】

 ・インターバル撮影機能なし(リモコンで対応)
 ・やや大柄で重い
 ・AE(自動露出)が少々過敏?


発売から少々時間が経過していますが、デジタル一眼レフの中でも中上級クラスに位置するカメラです。4Kタイムラプス映像の撮影においても基本性能に不足はありません。解像度とファイルサイズのバランスも丁度良い感じです。

このクラスのカメラは信頼性も高く安心して撮影に臨めますが、その信頼性と引き換えに大きくて重くなるところが難点でしょうか。三脚のみの使用であれば特に問題はありませんが、上の写真のようにスライダーや回転台を使う場合は少々気を遣います。また今回、この機種の特性なのか個体差なのかは不明ですが、絞り優先AEで撮影した際に露出がかなりバラつくことがありました。1枚1枚の写真として見れば異常という程では無いのですが、そのまま動画にするとちょっと気になるレベル。日没や日の出を跨ぐ撮影などでどうしてもAEを使いたい場合は事前に十分なテストをしておくことをお勧めします。


Nikon D800E

2014年5月現在、SONY α7Rと並び35mmフルサイズ以下のクラスで最も高解像度のイメージセンサーを持つカメラ。センサーサイズは35mmフルサイズ、有効画素数36MP。レンズは AF-S NIKKOR 70-200mm f/4G ED VR を使用。今回は疑似的なカメラワークのテストとして2カットのみ投入。

Nikon D800E

D800Eで撮影したカット
D800E で撮影したカット



【4Kタイムラプス的にGOODな点】

 ・8Kに迫る余裕の解像度(36MP 7,360×4,912 ピクセル)
 ・インターバル撮影機能内蔵
 ・画質面で有利なフルサイズセンサー

【4Kタイムラプス的にBADな点】

 ・速度的にも容量的にもPCに厳しいファイルサイズ
 ・大柄で重い
 ・お値段


価格的な面も含め、タイムラプス主体で考えると全体にオーバースペックであることは否めません。解像度が高い分ファイルサイズも大きいので、後処理を行うPCにもそれなりに高い性能が求められます。またファイルと同様にボディも大きく重いので、取り回しも良好とは言えません。

しかし、8Kに迫る解像度は後処理でのカメラワークの自由度を大きく広げてくれます。普段は他のカメラを使い、後処理で大きな動きを入れたいカットにのみ投入といった使い方ができれば理想的ですが…後はお財布との相談。ちなみに同じセンサーでもα7Rはミラーレスのため、D800/D800Eと比べるとそこそこ安く入手可能です。


Panasonic LUMIX G6

今回、4Kタイムラプス撮影用に新規購入したカメラ。センサーサイズは4/3、有効画素数16MP。レンズは全カット LUMIX G VARIO 12-32mm/F3.5-5.6 を使用。

Panasonic LUMIX G6

LUMIV G6で撮影したカット
LUMIX G6 で撮影したカット



【4Kタイムラプス的にGOODな点】

 ・必要充分な解像度(16MP 4,608×3,456 ピクセル)
 ・インターバル撮影機能内蔵(連続再生機能付き)
 ・電子シャッター搭載
 ・バリアングル液晶
 ・小型軽量
 ・比較的安価

【4Kタイムラプス的にBADな点】

 ・暗所ではやや辛いセンサー


ここまで挙げてきた「4Kタイムラプスのため」に欲しい要素をバランスよく持っているカメラです。16MPの解像度は後処理でカメラワークを追加するには若干狭く感じますが、サンプルムービーを見て頂けば分かる通り、余裕のある上下方向(チルト)を中心に退屈させない程度の動きは作れます。電子シャッターを使えば、静かに、そしてシャッターの寿命を気にすることなく長時間の撮影が可能。バリアングル液晶や電子水準器など、アングルを決める際に役立つ機能も豊富です。

難点は、感度を上げたり露光時間を長くした場合に出るノイズの量。使うレンズの明るさ(今回使用したレンズは暗め)にも因りますが、センサーのサイズが小さいこともあって、暗い場所での撮影には限界を感じます。サンプルムービーのような明るい街の夜景であれば問題ありませんが、それ未満の明るさとなるとちょっと厳しいかも知れません。


■ ■ ■


以上3台のカメラで撮影を行った結果、最も強く感じたのは「軽い(小さい)は正義」ということ。

以前にも少し触れましたが、タイムラプス映像の撮影では「カメラをどこにどうやって固定するか」ということが重要になってきます。カメラの設置方法として最もポピュラーな三脚は、往々にして通行の妨げになったり、安定して設置できるスペースがないなどの理由から使える場所が限られてきます。三脚禁止の観光地や景勝地も珍しくありません。そんな時、軽くて小さいカメラであれば三脚以外の方法で保持することが容易になります。


Panasonic LUMIX G6 + Manfrotto ポケット三脚


今回のサンプルムービーの撮影では、LUMIX G6との組み合わせで上の写真のような「ポケット三脚」を多用しました。他にも吸盤やクランプを使ったマウントの活用など、カメラが軽く小さければセッティングの幅が大きく広がります。

そんなことも踏まえて、カメラ選びの結論としては「4/3又はAPS-Cクラスのミラーレス」を一押しにしたいと思います。どうしても夜景や日の出日の入りを撮りたくなるのがタイムラプスの常なので、画素数は欲張らずに14MP~18MP。もしも予算が許すなら、あまり重くならない範囲で明るいレンズと組み合わせてあげて下さい。

もちろん多少の不便は覚悟の上で、本格的に画質や表現の幅を追求するなら35mmフルサイズや高画素機、逆にもっと気軽にコンパクトにということであれば、最近増えてきた1インチクラスのセンサーを積んだ製品なども良いと思います。当たり前のことですが「この1台で全てオッケー!」なカメラは存在しません。自分が何を撮りたいのか、それを撮るには何が必要なのか、をよく考えて選ぶようにして下さい。


と、延々と書き連ねて来た割にはありきたりな結論が出たところで「4Kタイムラプスのためのカメラ選び」は一旦終了。次回は、撮影前の準備についてまとめる予定です。
 

2014年5月22日木曜日

4Kタイムラプスのためのカメラ選び(4)


さて。
カメラ選びも今日で4回目。そろそろ終わりにして次に進みたいところです。


ミラーレスまたはコンパクトデジタルカメラ

ここで、今まで挙げてきた「あったらいいな♪」の内容をもう一度見てみましょう。

  ・マニュアルフォーカス
  ・マニュアル露出
  ・RAW形式での保存
  ・大きめのイメージセンサー
  ・ちょっと余裕のある解像度

この5つの条件をカメラ屋さんで口にすると、もれなく!とまでは言いませんがかなりの確率でデジタル一眼レフを勧められます。

実際、現在販売されているデジタル一眼レフのほとんどが上の条件を満たしています。インターバル撮影機能が無い機種もありますがリモートレリーズ端子が付いていれば問題ありません。明るくて性能の良い交換レンズも揃っています。普通の写真撮影はもちろん、タイムラプス映像の撮影でも存分に実力を発揮してくれることは間違いありません。思わず「これ下さい!」と言ってしまいそうです。

でも。

当然ながらいいお値段がします。そして一眼レフ機の場合、いいお値段のかなりの部分が「光学ファインダー」と「位相差オートフォーカス」のために使われています。詳しい説明はここでは省きますが、ざっくりというと2つとも「一瞬のシャッターチャンスを逃さない」ための機能というか仕組みです。

しかし、「一瞬のシャッターチャンス」よりも「長時間」に意味があるタイムラプス映像の撮影では、この2つが必要になることはほとんどありません。編集のしやすさや仕上がりの画質にも無関係です。さらには、内部の構造が複雑になるため大きくなったり重くなったりというデメリットもあります。そんな「いらないこと」のために余分にお金を払うなら、焼肉でも食べに行った方がいいような気もします。デジタル一眼レフの基本性能の高さは十分に魅力的ですが、ここはひとつ他の選択肢についても検討してみましょう。

ここ数年で急速に勢力を拡大しつつあるミラーレス機は、簡単に言ってしまうとデジタル一眼レフから上の2つを取り除いたもの(※)。その分カメラ本体は小型軽量で構造もシンプル。お値段についても同じクラスのイメージセンサーを積んだ一眼レフと比べると割安です。基本性能も十分に高いので、コストパフォーマンスや扱いやすさという点ではデジタル一眼レフよりもタイムラプス映像の撮影に向いたカメラと言えます。ちなみに「一瞬のシャッターチャンス」への対応力も以前と比べると格段に向上しているため、通常の写真撮影でも不便を感じることはほとんど無いと思います。(※一部、位相差オートフォーカスが使える機種もあります)

そしてさらにお手軽なのが、コンパクトデジタルカメラ。上の5つの条件(特にセンサーサイズ)を満たすのは一部の上位機種に限られてしまうこと、操作ボタンやダイヤル類が少なかったり小さいためにマニュアルでの操作にはあまり向いていないこと、「コンパクト」という割には基本性能が高い機種はそれなりに大きいこと、など、積極的に選ぶにはネガティブな要素も多々ありますが、画質や使い勝手などをある程度割り切って、自分なりの条件に合うものが見つかれば最良の選択にもなり得ます。もちろん、とっつきやすい価格も魅力です。

ちなみにカメラの種別ですが、一般的に「レンズ交換ができて光学ファインダーを持ったデジタルカメラ」をデジタル一眼レフ、「レンズ交換ができて光学ファインダーを持たないデジタルカメラ」をミラーレスと呼んでいます。一眼レフのようなファインダーが付いていても、それが光学式ではなく電子式のファインダー(EVF)ならミラーレスに区分されます。そして「レンズが交換できないデジタルカメラ」がコンパクトデジタルカメラ。ただし一眼レフに近い形や大きさの高倍率ズームレンズ付きコンパクトデジタルカメラについては「ネオ一眼」などと呼んで区別することもあります。実は他にも「コンパクトシステムカメラ」やら「ノンレフレックス」やら、色々な呼び方や区分の仕方があるのですが、ここではごく一般的なものだけにしておきます。


電子シャッター

現在、携帯電話やタブレット端末、トイカメラなどの超低価格帯の製品を除くほとんどのデジタルスチルカメラには、メカニカルシャッター(機械式のシャッター)が使われています。そしてこのシャッターには機械ゆえの「物理的な寿命」が存在します。一般的なデジタルカメラの場合、その相場は概ね10万~20万ショット。プロのフォトグラファーや連写マニアでもない限り、普通に写真を撮るだけならあまり気にしなくても良い数字です。が、タイムラプス映像の撮影ではちょっと事情が変わってきます。

一般的な30pのムービーを例に、メカニカルシャッターが寿命を迎えるまでの時間を計算してみましょう。1秒あたりのフレーム数は30。タイムラプス映像の撮影では、基本的にこの30のフレーム全てに対して1枚1枚写真を撮る、すなわちカメラのシャッターを切ることになります。よって再生時間あたりのシャッター数は30回/秒。

シャッターの寿命を15万回として、この「30回/秒」で割ると答えは5,000秒。だいたい83分の映像素材を撮影した時点でシャッターが寿命を迎える計算になります。60pで仕上げるつもりなら40分ちょっと。NGテイク(タイムラプスの場合「頑張って撮ってみたけど動画にしたらつまらんかった!」という事が割とよくあります)も含めると意外と早く到達してしまいます。もちろん15万回ジャストでシャッターが壊れると決まっている訳ではありませんが、不安要素は少ないに越したことはありません。

そこで注目したいのが「電子シャッター」です。

電子シャッターとは、メカニカルシャッターの働きを電気的に置き換えたもの。動く部分が無いので、物理的な寿命の心配はありません。また、シャッター音がしないので、静かな環境でも気兼ねなく撮影することが出来ます(一定間隔で延々と鳴り続けるシャッター音は意外と耳障りに感じるものです)。さらに、メカニカルシャッターと比べて露光時間の誤差が出にくい(=1枚1枚の写真の露出が安定する)というメリットもあります。

ただし、CMOSイメージセンサーと組み合わせた場合に動きのあるものを撮ると像が歪む(下の写真参照)というデメリットもあります。


LUMIX G6 電子シャッターの歪み比較
メカニカルシャッターで撮影
 
 
LUMIX G6 電子シャッターの歪み比較
電子シャッターで撮影


イメージセンサーの主流がCMOSになって以降、この「歪み問題」から“まともなスチルカメラ”では敬遠されていた電子シャッターですが、最近では歪みを低減する技術もそこそこ進み、状況に応じてメカニカルシャッターと電子シャッターを切り替えて使える製品も出てきました。搭載されている機種はまだまだ限定的ですが、タイムラプス撮影を目的にした場合、電子シャッターが使えるというのはかなり魅力的な選択肢です。


バリアングル液晶/電子水準器

これについてはそれほど気にする必要はありません。ただ、タイムラプス映像の撮影では1テイクに数十分~数時間という時間を要するため、「ちょっとアングルを直してもう1テイク」ということが辛かったり無理だったりすることがほとんどです。撮影中に微妙にカメラが傾いていることに気付いたりするともう最悪。最初から撮り直すか、傾いたままで良しとするかで延々と悩むことになります。なので、アングルを決めるための便利機能は多いに越したことはない!という意味で挙げてみました。


以上、3回に渡ってだらだらとお送りしてきた「絶対条件ではないけれど、あったらいいな♪」的な機能や性能はこれにて終了。次回はサンプルムービーの撮影で実際に使用した機種を元に、カメラ選びのまとめをお送りしたいと思います。
 

2014年5月19日月曜日

4Kタイムラプスのためのカメラ選び(3)


「絶対条件ではないけれど、あったらいいな♪」的な機能や性能の続きです。


大きめのイメージセンサー

フィルムカメラのフィルムに当たる部分、光を電気信号に変える半導体素子がイメージセンサー(撮像素子)です。方式を元にCMOSやCCDなどと呼ばれることもあります。

イメージセンサーの表面には碁盤の目のように整然と画素(ピクセル)が並んでいます。そしてこの画素の総数で撮れる写真の解像度が決まります。カタログや広告などでよく見かける「○○MP(メガピクセル)」とか「○○万画素」というやつです。解像度というのは自動車に例えると「馬力」のようなもので、その分かりやすさ故に少し前まではデジタルカメラの性能や画質を表す絶対尺度のように使われていました。

しかし、イメージセンサーで画質を語るにはもうひとつ忘れてはいけない重要な要素があります。それが「センサーサイズ」すなわちイメージセンサーそのものの大きさ。自動車でいうと「トルク」や「排気量」に当たる部分です。

以下に、デジタルカメラで使われている代表的なセンサーサイズをまとめました。もちろん他の大きさの物もありますが、現在市販されている一般向けのデジタルカメラの多くがこの図の中にあるサイズのイメージセンサーを使用しています。

デジタルカメラのセンサーサイズ比較


注目したいのは、同じ「デジタルカメラ」でも製品によってセンサーサイズに大きな違いがあること。図の中で一番小さい1/2.3型と35mmフルサイズ型の間には、面積比で30倍以上の差があります。

そしてこの差は多くの場合、ダイナミックレンジの広さやノイズの量の違いとして、撮影した写真の画質に直結します。特に解像度の高いセンサーの場合は、ひとつひとつの画素が受ける光の量が極めて少ないため、センサーの大きさによる画質の差がより顕著に表れます。(当然ですがサイズの大きいセンサーの方が有利。逆にサイズが同じセンサーであれば解像度が低い方が有利になります)

L判からせいぜいA4サイズの大きさでプリントすることがほとんどの普通の写真とは違い、4K映像は60~100インチ前後のモニタでの鑑賞が主体になるため、予算が許す限り、画質面で圧倒的に有利な大きめのイメージセンサーを搭載したカメラをお勧めします。

具体的には1型(1インチ)、できれば 4/3型(フォーサーズ/マイクロフォーサーズ)以上が理想です。さらに星景などの極端に暗い被写体をメインに考えているのであれば最低でもAPS-C以上のサイズ(使用するレンズや解像度にもよりますが)が無いとノイズ的にかなり厳しくなってきます。逆に天気の良い日中の撮影であれば1/1.7型や1/2.3型で十分な場合もあります。


ちょっと余裕のある解像度

タイムラプス映像の撮影が通常のムービー撮影と最も異なる点について考えてみましょう。

それは、「ほとんどのシチュエーションにおいてカメラを完全に固定する必要がある」ということ。

数秒から数十秒間隔で1枚づつシャッターを切るインターバル撮影では、手持ちでの撮影はもちろんのこと、三脚を使ったとしてもパンやズームなどは専用の “ゆっくり動く機材” (後日あらためて紹介する予定です)を用意しない限りほぼ不可能です。その結果、全て又はほとんどの撮影素材がFIXすなわちカメラワークの無い単調なものになってしまうという問題が発生します。

そこはアングルの工夫やカットのつなぎ方でカバーして…という積極的な考え方もありますが、撮影した素材の解像度にある程度の余裕(=余白)があれば、その余白を使って後処理で疑似的なカメラワーク(パン/ティルト/ズーム)を作り出すことが出来ます。実際に、世の中に出回っているタイムラプス映像の多くが疑似的なカメラワークによって成り立っています。もちろん今回制作したサンプルムービーでも多くのカットで使用しています。

しかしSDやHD仕上げならともかく、4Kともなるとイメージセンサーの解像度によっては使える余白がほとんど無いということも起こります。また逆に、上で触れたようにセンサーサイズが同じ場合は解像度が低い方が画質的に有利という一面もあるため、必ずしも余白が多い方がいいという訳でもありません。

以下に、イメージセンサーの解像度別にパン/ティルト/ズームが可能な範囲をまとめましたので、自分なりの「ちょっと余裕のある解像度」を見つけて下さい。


イメージセンサーの余白一覧
 4K UHDTV 仕上げの場合のイメージセンサーの余白
(解像度から算出した値。実際にはレンズの歪みや周辺画質の低下などで制約を受ける場合があります)
 


次回は「4Kタイムラプスのためのカメラ選び(4)」
 「絶対条件ではないけれど、あったらいいな♪」的な機能や性能についてまだまだ続ける予定です…
 

2014年5月15日木曜日

4Kタイムラプスのためのカメラ選び(2)


カメラ選びの2回目は、4Kタイムラプス映像を撮影するにあたって「絶対条件ではないけれど、あったらいいな♪」的な機能や性能について、ひとつひとつまとめてみようと思います。微妙に専門的な内容も入ってきますが、よろしくお付き合い下さい。


マニュアルフォーカス(又はフォーカス固定機能)

タイムラプス映像の撮影は、基本的にマニュアルフォーカスで行います。

オートフォーカスの状態でインターバル撮影を行うと、シャッターを1回切る度に自動的にフォーカスを合わせ直す動作が入るため、シャッターを切る間隔がズレてしまったり、映像として並べた時に1枚1枚のフォーカスの微妙な誤差がチラつきやゆらぎとなって現れることがあります。また、撮影条件によってはフォーカスが合いにくい/合わないこともあるため、被写体やアングルの選び方に制約が出てきます。さらにフォーカス調整用のモーターが作動することでバッテリーの消耗が激しくなるなど、タイムラプス映像の撮影に限って言えば、オートフォーカスは百害あって一利なし、無用の長物です。

もちろんそれでも撮れないことは無いのですが、タイムラプスを主目的にカメラを選ぶのであれば、オートフォーカスしかできない(フォーカスを固定できない)機種はあらかじめ候補から外しておきましょう。


マニュアル露出設定

露出設定とは、簡単に言うと「撮影時に行う明るさの調整」のこと。基本的には「シャッター速度」「絞り」「感度」の3つの設定を組み合わせて、撮影する写真の明るさを決定します。

そしてこの3つの設定の全て、又は一部をカメラが判断し、適正な露出になるように自動調整してくれるのが「AE」(自動露出)という機能。この機能、ほとんどのデジタルカメラに標準で付いていますが、全自動の「オート」や「プログラムオート(P)」モードしか選べない機種から、一部の設定をユーザー側で操作する「シャッター速度優先AE(S/Tv)」や「絞り優先AE(A/Av)」が使える機種、さらにはAE自体をキャンセルすることができる「マニュアル(M)」モードが付いた機種まで、その内容はさまざまです。

これについても、できれば「マニュアル(M)」モードが付いたカメラを選ぶようにして下さい。

数秒~数十秒間隔でシャッターを切ることになるタイムラプス映像の撮影では、シャッターとシャッターの合間に光線の具合が大きく変化してしまうような場合が多々あります。明け方や夕暮れ時のように刻一刻と明るさが変わったり、雲の間から太陽が見え隠れしているような状況はもちろんのこと、フレームの中を人や車が横切るだけでも、カメラが判断する “適正な露出” は人間の目が感じる以上に大きく変化してしまいます。

この「変化する光」に対して、シャッターを切る度にAEによる調整を適用するとどうなるでしょうか?

最近のAEは優秀なので、1枚1枚の写真としてはどれも明るさのバランスがとれたお手本的な写真が撮れる筈です。さらに露出補正や測光方式にまでこだわれば、ユーザーが意図した通りの光と陰影が得られたりもします。ですが、これを並べて1本の映像にすると、画面全体の印象は変わらないのに被写体の明るさだけがパカパカと変わったり、逆に背景の明るさがひとコマ毎に大きく変動するなど、非常に不安定で観るに堪えない仕上がりになることがあります。また、モードの選択によっては明るさだけではなくボケやブレの具合までもが変わってしまうこともあります。これらの現象は、AEが時間的な連続性を無視して、常に「その時のベスト」に露出を調整してしまうことに起因します。(スチルカメラの場合。ムービーカメラのAEには連続性が加味されています)

これに対して、露出設定を固定するマニュアルモードでは、1枚1枚の写真で見ると露出がオーバーやアンダーになることがあっても、映像にすると被写体と背景それぞれの明るさに時間的な連続性が出るため、結果として安定感のある自然な仕上がりが得られます。

AEの制御はメーカーや機種によって結構差があり、実際に使ってみると不都合をほとんど感じさせないカメラや、逆に積極的にAEを使った方が良い結果が得られるような場合も無くはないのですが、既に持っているカメラを使うのならともかく、これから新調するのであればマニュアルモード付きのカメラを選ぶようにして下さい。


LUMIX G6 モードダイヤル
Panasonic LUMIX G6 のモード選択ダイヤル


RAW形式での記録

イメージセンサーからの電気信号を単純にデジタル化しただけのデータのことを「RAW(ロウ)データ」と呼びます。フィルムカメラに例えると、撮影しただけでまだ現像が終わっていないフィルムのようなもの。

デジタルカメラで写真を撮ると、カメラの内部ではまずRAWデータが生成され、更にそのデータをJPEGなどの画像データに変換する「現像工程」を経て、出来上がった画像が背面モニタに表示されたりメモリーカードに記録されます。一眼レフやミラーレスをはじめとした一部のデジタルカメラでは、この現像工程を後で行うことができるようにデータの記録形式として「RAW」が選べるようになっています。

この「RAW」形式でデータを記録しておくと、後で明るさや色の補正が必要になった時に非常に楽です。

タイムラプス映像の撮影には、1カットに短くても数分、長ければ半日や丸一日という時間が必要です。そのため、あらかじめ慎重に露出を設定してから撮影を始めても、時間が経つにつれて明るくなり過ぎたり暗くなり過ぎたりといったことがごく普通に起こります。このような場合に、撮影した写真のデータがRAWの状態で記録されていると、明るさや色調を後処理(編集やその準備段階)で調整できる幅が格段に広がります。感覚的にはJPEGに対して3倍ぐらいの幅でしょうか。真っ白に飛んでしまったような空や、真っ暗で何も写っていないような闇も、RAWで記録していれば階調を取り戻せる可能性が高くなります。もちろん明るさや色調だけでなく、歪みの補正やノイズの除去などについてもRAWの方が圧倒的に有利です。

問題は、JPEGで記録する場合に比べてデータのサイズが嵩張ることと、RAW形式での記録ができるカメラが割と高価な機種に限られてしまうこと。また、RAWデータを元に後処理を行う際にはそれなりに性能の高いPCを使わないとかなりのストレスを感じることになります。

そのあたりのことを考えると、徹底して仕上がりに拘る!ということで無ければ、RAW形式での記録はそれほど気にしなくても良い条件かも知れません。でも…やっぱりあると便利です。


次回は「4Kタイムラプスのためのカメラ選び(3)」
「絶対条件ではないけれど、あったらいいな♪」的な機能や性能の続きをお送りします。
 

2014年5月12日月曜日

4Kタイムラプスのためのカメラ選び(1)


それでは具体的なカメラ選びについて考えて行きましょう。


前回、カメラに求められる基本条件として以下の2つを挙げました。

  ・概ね12MP以上の画素数の写真が撮れること
  ・インターバル撮影機能(またはリモートレリーズ端子)が付いていること

今日はこの2つの条件について、もう少し掘り下げてみたいと思います。


ひとつめの条件は、より具体的に書くと「4K(UHDTV)の規格である 3,840×2,160pixels 以上の解像度を持った写真(静止画)が撮影できる」ということ。4K映像の元になる素材を撮るためですから当然の条件です。最近はコンパクトデジタルカメラでも12MP以上の画素数を持った製品がほとんどのため、「むかし買ったカメラを引っ張り出して…」ということでもなければそれほど気にする必要は無いと思います。


ふたつめの条件である「インターバル撮影機能」というのは、ユーザーが設定した間隔でカメラが自動的にシャッターを切り続けてくれる機能。タイムラプス映像を作ろうとしている訳ですから、これも当然の条件です。

が、この機能に関しては最近のデジタルカメラでも付いていない、または付いていても使える範囲が限定的で映像制作にはあまり向いていない製品もあるので要注意。タイムラプス用にわざわざカメラを買ったのに使えなかった!とならないように念入りな下調べが必要です。

具体的には、インターバル撮影機能として

  ・300枚以上の撮影枚数が設定できる
  ・シャッターを切る間隔を最短で1秒(又はそれ以下)に設定できる
  ・撮った写真が(勝手にムービーに変換されずに)静止画として1枚1枚個別に保存できる

ということに加えて、カメラ自体の性能として

  ・バッテリーの持ちが良い、又は外部電源を使って撮影ができる

以上の4点をチェック。

撮った写真が静止画として保存できること以外は絶対的な条件ではありませんが、満たしていない場合は撮影できるカットの長さやムービーの速度に限界=フラストレーションを感じる場面が増えると思います。カタログやホームページの機能説明だけでは詳細が判らないこともあるため、取扱い説明書を入手するか、店頭などで実際に手に取って確認するようにして下さい。

なお、インターバル撮影機能を持たないカメラでも、リモートレリーズ端子が付いていればリモコンを追加することでインターバル撮影ができる可能性があります。リモコン自体はメーカー純正に拘らなければ2~3千円程度で入手可能。リモートレリーズ端子付きのカメラを持っている方は、適合するリモコンがないか探してみて下さい。


インターバルコントローラー
今回、Canon EOS 7D用に購入したインターバル撮影機能付きリモコン(2,980円)
 


さらに、実はインターバル撮影機能もリモートレリーズ端子も付いていないカメラを使ってタイムラプス映像を撮ることも出来なくは無いのですが…。ちょっと裏技というか荒業っぽいやり方になるのでここでは割愛します。


次回は、「4Kタイムラプスのためのカメラ選び(2)」
「絶対条件ではないけれど、あったらいいな♪」的な機能や性能についてまとめます。
 
 
 

2014年5月8日木曜日

手始めに、タイムラプス


さてさて。

この春、待望の民生用 4Kカメラが相次いで登場しました。でもまだまだそれなりに高値の花。しかも先日発売されたばかりの LUMIX GH4 に至っては人気沸騰で当面は入手困難というおまけ付きです。(2014年5月現在)

そんな騒ぎを横目に、もっと低予算で、そしてちょっと変わった 4K映像を作ることが出来るのが、最近やたらと耳にすることが多くなった「タイムラプス」という手法。ちょっと前まではもう少し分かりやすく「微速度」「コマ撮り」「インターバル撮影」などと呼ばれていた撮影方法です。要するに「ムービー」ではなく「写真」を連続で撮影して、それをパラパラ漫画の要領で繋ぎ合わせて1本の映像に仕上げていくというやり方です。


この方法なら、カメラに求められる基本条件は2つのみ。

  ・概ね12MP(メガピクセル)以上の画素数の写真が撮れること
  ・インターバル撮影機能(またはリモートレリーズ端子)が付いていること

これだけです。この条件さえ満たしていれば、4K どころか SD画質の動画撮影機能すらついていないカメラでも、誰でも簡単(でも多少の忍耐力は必要)に 4K映像(…を作るための素材)を撮ることができるのです。

このブログでは、当面の間タイムラプスによる 4K映像制作を取り上げます。

そのため、ブログのタイトルも(とりあえず)「4K Time-lapse report」としました。そしてそこそこの時間と手間をかけて撮影/編集したサンプルムービーも用意しました。






次回からはこのサンプルムービーを元に、カメラの用意から撮影、編集までのレポートを少しづつ紹介していこうと思います。
 
 
 

そもそも4K映像って何?


水平方向(長辺)に約4,000pixels の解像度を持つ映像の総称。

垂直方向(短辺)の解像度(約2,000pixels)を加えて「4K2K」とも呼ばれますが、世の中の認知度が高まるにつれて最近ではシンプルに「4K」と表すことが増えているようです。テレビ放送向けの「4K UHDTV」(3,840×2,160pixels)や映画向けの「DCI 4K」(4,096×2,160pixels)などの規格があります。

4K UHDTV の場合、Full HD(1,920×1,080pixels)の丁度4倍の画素数になりますが、4Kの「4」はあくまでも4,000pixels の「4」。「Full HD の4倍」という意味ではありません。ちなみに2020年の東京オリンピックに向けて導入が検討されている「8K」も、水平方向の解像度に基づくネーミング。8K  UHDTV の場合、画素数は「Full HD の8倍」ではなく16倍です。



4K UHDTVの解像度



ちょっと話は逸れますが、「pixel 」(ピクセル)と 「dot 」(ドット)の違いはご存じでしょうか?

pixel は日本語で「画素」。デジタルデバイス上で画像や映像を扱う際の最小構成単位で、ひとつひとつに色調や階調の情報が含まれています。対して dot は単なる「点」。本来は印刷物上の画像などを構成する、色調や階調の情報を持たない物理的な点のことを指します。

この2つは往々にして似たような意味合いで使われますが、できれば意識して使い分けるようにして下さい。

デジタルの画像や映像を構成しているのは dot ではなく pixel です(dot と呼んでいいのはモノクロ2階調の場合のみ)。液晶テレビの画面やデジタルカメラのイメージセンサーを構成しているのも pixel 。なので、4K UHDTV の水平解像度は「3,840 pixels 」であって「3,840 dots 」ではありません。デジタルカメラのセンサーも「24MP」と表すことはあっても「24MD」とは言いません。

これに対して、印刷された画像や写真のフィルムは多くの場合 dot で構成されています。pixel が整然と縦横に並んでいるのに対し、dot は密集したり離れたりすることで色調や階調を作り出します。例えばデジタル画像を印刷する時、元のデータの1つの pixel の色や明るさを表現するために、数個~数十個の dot が使われたりします。すなわち「1pixel ≠ 1dot 」 ということです。

こうしてみると pixel と dot は完全に別物で、それなりに正しく使い分けられているようにも見えるのですが、これが物理的な解像度を示す単位「ppi (pixels per inch)」と「dpi (dots per inch)」の話になるとちょっと事情が変わってきます。

本来なら ppi を使うべき場面の多くで慣用的に dpi が使われているのです。

この混用、デジタルデバイスの中だけで完結している分にはそれほど問題はないのですが、例えばデジタル画像を印刷したり、テレビ画面の解像度と印刷物の解像度を比較するような場面では、使っている単位は同じなのに元になる尺度が全く異なることで、余計な勘違いや決定的な間違いを生み出す恐れがあります。

この先、4Kや8Kが身近になるにつれて、テレビ画面のリアリティを印刷物に例えるような表現が増えて来ると思います。そんな時に尺度の異なる数字の比較に騙されたり、逆に誰かを騙してしまわないように、pixel と dot の違いは日頃から明確に意識するようにしておきましょう。
 

Introduction


民生用のムービーカメラも相次いで発売され、急速に身近なものになりつつある「4K」映像。

このブログでは、プロ向けの高価な機材を使うのではなく、一般向けのカメラとPCを使った比較的安価に楽しめる4K映像の撮影と編集について、ちょっとしたコツや注意点などをあまり専門的にならない範囲でまとめて行きたいと思います。