今回は「撮影前の準備(カメラ篇)」として、4Kタイムラプス映像の撮影に向けたカメラのセットアップについてまとめます。
■ ファームウェアの確認
まずは手始めに、カメラのファームウェアを確認しましょう。
■ ファームウェアの確認
まずは手始めに、カメラのファームウェアを確認しましょう。
ファームウェアというのは、電子機器の動作を制御するためにその機器に組み込まれたソフトウェアのこと。もちろんデジタルカメラの中にも入っています。そしてこのファームウェア、不具合を修正したり新しい機能を追加するために、バージョンアップされることがあります。メーカーのWEBサイトの「サポート」もしくは「ダウンロード」のページを覗くと、機種ごとのファームウェアの情報が公開されているので、必要に応じてダウンロードと更新作業を行って下さい。
例えば今回のサンプルムービーの撮影で使用したカメラ、LUMIX G6 では、フォーカスリングが付いていないレンズ LUMIX G VARIO 12-32mm/F3.5-5.6 を装着した場合、当初はオートフォーカスのみでマニュアルでのフォーカス操作は出来ませんでした。しかし、その後のファームウェアの更新によって現在はフォーカス操作が可能になっています。このように使い勝手が大きく変わるバージョンアップもあるため、ファームウェアは必ず確認するようにして下さい。ユーザー登録をしておくとお知らせのメールが届くので便利です。
■ タイムラプス映像の撮影に向けた設定
ファームウェアの確認/更新が終わったら、次はカメラの設定です。
設定できる項目は多岐に渡りますが、ここでは一般的なことは割愛して、タイムラプス映像を撮影する上で注意しておきたい点のみを取り上げます。
・フォーカスモード
マニュアルフォーカス(MF)に設定。
・露出モード
マニュアル露出モード(M)に設定。
マニュアル露出モード(M)に設定。
同時に、露出を決める「絞り」「シャッター速度」「感度」の設定方法と、カメラに内蔵されている露出計の表示と使い方、測光モードについても確認して下さい。最初は少し複雑&煩雑に感じるかも知れませんが、安定した映像を得るための基本(※)です。マニュアル露出モードに慣れて露出調整の感覚がつかめたら、状況に応じて「絞り優先AE(A/Av)」を併用していきます。 ※ 4Kタイムラプスのためのカメラ選び(2)参照
・ホワイトバランス(WB)
オート(AWB)以外 に設定。
ホワイトバランスとは、撮った写真の色合いを決定する調整項目。露出モードと同様、オートで撮ると映像としてつないだ時に色調が安定せずにチラついて見える可能性があります。RAW記録の場合はざっくりと「太陽光」または「曇り」あたりに設定(後で自由に調整できます)、JPEG記録の場合は仕上がりのイメージに近くなるように調整して下さい。なお、ホワイトバランスは「通常使う設定」を自分で決めておくと各カットの色合いに統一感が出てスッキリとした映像に仕上がります。
・記録形式
RAW(又はJPEG)に設定。
後処理での調整幅を確保するため、RAW形式が選べるカメラはRAWを、それ以外のカメラはJPEGの最高画質に設定して下さい(JPEG以外にも選択肢がある場合は画質が良い方を選択)。ちなみにRAWで記録する場合は「RAW+JPEG」設定にならないように注意。RAW+JPEGは同じ画像をRAWとJPEGの両方の形式で記録するため、撮影可能枚数が減る上に記録にも余計な時間が掛かってしまいます。
・手振れ補正
必ず OFF に設定。
・ノイズリダクション/歪み補正/その他補正
とりあえず全て OFF に設定。
短い間隔でシャッターを切る場合に補正処理が間に合わなくなってコマ落ち(画像が記録できていない)が発生することがあります。RAWで記録しておけば大抵の補正は現像時に追加できるので、基本的には全てOFFでの撮影をお勧めします。
・インターバル撮影設定
ここまでの設定がひと通り出来たら、最後にインターバル撮影の設定と操作方法を確認します。インターバル撮影機能が内蔵されているカメラでは、メニューの呼び出し方、撮影間隔や枚数の設定方法、撮影開始までの手順など。レリーズリモコンで対応する場合は、カメラにリモコンを接続して、同様に各種設定と撮影開始までの手順を確認して下さい。
■ テスト撮影
設定が完了したらいよいよインターバル撮影機能を使ったテスト撮影です。例えば下記のような手順でカメラとレンズの特性をチェックします。
1.シャッター速度の誤差(変動)チェック
明るさの変化が少ない場所と時間(屋外なら晴れた日の日中、室内なら蛍光灯やテレビの光の影響を受けない場所)を選んで行います。マニュアル露出モード/絞り解放(F値が最小)/通常使う感度 にセットした状態で、適正露出になるように被写体の明るさとシャッター速度(以下SS)を調整して、数秒程度のインターバルで10枚ほど撮影。
撮影した画像の明るさが全部変わらなければ問題ありませんが、もし1枚1枚の明るさが細かく変わるようであれば、シャッターの動作にバラつきが発生している可能性があります。SSの設定をいろいろと変えて(絞りは解放のまま。適正露出になるように被写体の明るさを調整)テストを行い、特定のSSでのみバラつきが出る場合はそのSSを使わないようにします。全域でバラつきが出る場合は(程度にもよりますが)メーカーのサービスセンターに相談して下さい。
電子シャッターが使えるカメラでは、メカニカルシャッターと電子シャッターの両方でテストを行います。
2.絞りの誤差(変動)チェック
このチェックも、明るさの変化が少ない場所と時間を選んで行います。マニュアル露出モード/上のチェックで問題のなかったSS/通常使う感度 にセットした状態で、適正露出になるように絞りを調整(解放以外のF値を選択)して、数秒程度のインターバルで10枚ほど撮影。
撮影した画像の明るさが全部変わらなければ問題ありませんが、もし1枚1枚の明るさが細かく変わるようであれば、絞り羽根の動作にバラつきが発生している可能性があります。このチェックもF値を変えて繰り返しテストを行いますが、SSの場合とは異なり、絞りのバラつきの場合はF値が大きくなればなるほど目立つようになるのが一般的です。従って「どのF値までなら許せるか」を見極める必要があるのですが、確実なところは実際に映像にしてみないと判別できません。とりあえずは「明らかにバラつきが目立たないF値」の範囲をチェックし、それがあまりにも低い(解放から軽く絞っただけで目立つ)ようであれば、そのレンズは使わない(又はサービスセンターに相談)か、絞り羽根の影響が出ない解放限定で使うようにして下さい。
なお、「絞り環」(レンズ側で絞りを調整するためのリング)が付いたレンズの場合は、カメラと設定によっては絞り環を使ってレンズ側でF値を設定(絞り羽根を固定)することでバラつきの発生を回避できることがあります。絞りの設定は撮影した素材の解像感にも関係してくるため、特に4K仕上げの場合は絞りが安定したレンズを使いたいものです。
3.撮影可能間隔の割り出し
デジタルカメラでは、1枚の写真の撮影が完了するまでに、実際にシャッターが開いている時間に加えて、シャッターを開くまでの準備や、撮影後にイメージセンサーから取り出したデータを変換したり記録したりといった内部処理の時間が必要になります。そのため、インターバル撮影を行う場合は「シャッター速度 + 内部処理時間」以上の撮影間隔を空けなくてはなりません。
問題は、この「内部処理時間」がハッキリしないこと。カメラの機種はもちろんのこと、各種設定やメモリーカードの種類によっても異なるため、実際の使用環境に合った値を自力で割り出しておく必要があります。
本番で使う予定のメモリーカードをカメラに装着し、各種設定も済ませた上で、インターバルを1秒に設定。とりあえずSSを1/2秒にセットして正常な間隔で撮影出来るかどうかをチェックします。30枚ほど連続で撮影して問題がなければSSをより長く、問題あり(一部もしくは全ての撮影間隔が2秒になってしまう)の場合はSSをより短くセットしてチェックを繰り返していき、最終的に「問題なく撮影できた中で元も長いSS」を1秒から引いた値がその使用環境で必要な「内部処理時間」ということになります。もしSSを1/30秒程度にまで上げても正常な間隔で撮影できない場合は、インターバルを2秒に設定し直して再度1/2秒からチェックを行って下さい。当然ですがこの場合は正常な撮影間隔が2秒、問題がある場合は4秒、そして問題なく撮影できた中で最長のSSを2秒から引いた値が「内部処理時間」になります。
本番の撮影時には「使用するSSと テストで割り出した「内部処理時間」の合計」が「インターバル撮影機能で設定する撮影間隔」よりも長くならないように調整します。特に日没時に絞り優先AEを使う場合は、暗くなるにつれてSSが遅くなるので慎重な調整が必要です。
「内部処理時間」は記録形式の設定(RAW/JPEG)やノイズリダクションの有無、歪みなどの補正の有無、使用するメモリーカードなどによって大きく変動します。これらの設定を変えたり新しいカードを使う場合は、その都度テストを行って時間を割り出しておくことをお勧めします。
4.バッテリーの持続時間(撮影可能枚数)の確認
本番の撮影に近い形で、連続してどれ位の枚数が撮影できるのかを確認します。もちろん使用環境や設定で持続時間は変わりますが、それでも大体の目安を知っておくと撮影中の安心感が違います。特に新品のバッテリーの場合は使い始めの1~2回は性能が十分に発揮できないことがあるため、慣らし運転も兼ねて本番前に複数回のチェック行っておくと万全です。
5.AE(自動露出)のチェック
せっかくなので、最後にAEのチェックも行っておきましょう。
日没または夜明けの、明るさが大きく変化する時間帯を選んで、本番撮影のつもりで2時間程度の撮影を行います。インターバルを15秒に設定すると、撮影枚数は約500枚。上の「バッテリーの持続時間(撮影可能枚数)の確認」を兼ねてもいいかも知れません。
使用する露出モードは「絞り優先AE(A/Av)」、F値は絞り羽根による誤差を出さないために最小(解放)にセット。測光モードはメーカーによって名称が異なりますが、スポット測光の反対側、広く全体的に測光するモードに合わせて下さい。感度は、明るい時にシャッター速度が上限を超えずに、また暗くなってからも概ね10秒以内に収まる値に。明暗の差が激しいと適切な感度を選んでも収まらなくなる可能性があるので、そこそこ明るい夜景(遠景)が見える場所が理想的です。カメラのすぐ前を人やクルマが頻繁に横切ったり、目の前に明るい街灯があるような所はAEが必要以上に反応してしまうので今回のテストでは避けて下さい。
撮影が終わったら、編集ソフトを使って実際に映像にしてみるか、連続した何枚かの写真を比較して、明るさにバラつきが無いかを確認します。「シャッター速度の誤差(変動)チェック」では特に問題が無かったにもかかわらずバラつきが目立つようであれば、タイムラプス映像の撮影にはあまり向いていないAEかも知れません。条件を変えて繰り返しテストを行うか、マニュアル露出モードで何とかする方法を検討しましょう。逆にほとんど違和感が無ければ、積極的にAEが使えるカメラかも知れません。
AEはその時々の光の状況によって結果が変化するので、たまたま良かった/悪かった ということもあるため1回だけの結果では何とも判断しづらい所ですが、少なくとも「何が原因でこの結果になったのか」ということを考える材料にはなると思います。
少し長くなりましたが最後までお読み頂きありがとうございました。
次回は撮影前の準備のラスト、「リサーチ編」をお送りする予定です。
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