2014年5月22日木曜日

4Kタイムラプスのためのカメラ選び(4)


さて。
カメラ選びも今日で4回目。そろそろ終わりにして次に進みたいところです。


ミラーレスまたはコンパクトデジタルカメラ

ここで、今まで挙げてきた「あったらいいな♪」の内容をもう一度見てみましょう。

  ・マニュアルフォーカス
  ・マニュアル露出
  ・RAW形式での保存
  ・大きめのイメージセンサー
  ・ちょっと余裕のある解像度

この5つの条件をカメラ屋さんで口にすると、もれなく!とまでは言いませんがかなりの確率でデジタル一眼レフを勧められます。

実際、現在販売されているデジタル一眼レフのほとんどが上の条件を満たしています。インターバル撮影機能が無い機種もありますがリモートレリーズ端子が付いていれば問題ありません。明るくて性能の良い交換レンズも揃っています。普通の写真撮影はもちろん、タイムラプス映像の撮影でも存分に実力を発揮してくれることは間違いありません。思わず「これ下さい!」と言ってしまいそうです。

でも。

当然ながらいいお値段がします。そして一眼レフ機の場合、いいお値段のかなりの部分が「光学ファインダー」と「位相差オートフォーカス」のために使われています。詳しい説明はここでは省きますが、ざっくりというと2つとも「一瞬のシャッターチャンスを逃さない」ための機能というか仕組みです。

しかし、「一瞬のシャッターチャンス」よりも「長時間」に意味があるタイムラプス映像の撮影では、この2つが必要になることはほとんどありません。編集のしやすさや仕上がりの画質にも無関係です。さらには、内部の構造が複雑になるため大きくなったり重くなったりというデメリットもあります。そんな「いらないこと」のために余分にお金を払うなら、焼肉でも食べに行った方がいいような気もします。デジタル一眼レフの基本性能の高さは十分に魅力的ですが、ここはひとつ他の選択肢についても検討してみましょう。

ここ数年で急速に勢力を拡大しつつあるミラーレス機は、簡単に言ってしまうとデジタル一眼レフから上の2つを取り除いたもの(※)。その分カメラ本体は小型軽量で構造もシンプル。お値段についても同じクラスのイメージセンサーを積んだ一眼レフと比べると割安です。基本性能も十分に高いので、コストパフォーマンスや扱いやすさという点ではデジタル一眼レフよりもタイムラプス映像の撮影に向いたカメラと言えます。ちなみに「一瞬のシャッターチャンス」への対応力も以前と比べると格段に向上しているため、通常の写真撮影でも不便を感じることはほとんど無いと思います。(※一部、位相差オートフォーカスが使える機種もあります)

そしてさらにお手軽なのが、コンパクトデジタルカメラ。上の5つの条件(特にセンサーサイズ)を満たすのは一部の上位機種に限られてしまうこと、操作ボタンやダイヤル類が少なかったり小さいためにマニュアルでの操作にはあまり向いていないこと、「コンパクト」という割には基本性能が高い機種はそれなりに大きいこと、など、積極的に選ぶにはネガティブな要素も多々ありますが、画質や使い勝手などをある程度割り切って、自分なりの条件に合うものが見つかれば最良の選択にもなり得ます。もちろん、とっつきやすい価格も魅力です。

ちなみにカメラの種別ですが、一般的に「レンズ交換ができて光学ファインダーを持ったデジタルカメラ」をデジタル一眼レフ、「レンズ交換ができて光学ファインダーを持たないデジタルカメラ」をミラーレスと呼んでいます。一眼レフのようなファインダーが付いていても、それが光学式ではなく電子式のファインダー(EVF)ならミラーレスに区分されます。そして「レンズが交換できないデジタルカメラ」がコンパクトデジタルカメラ。ただし一眼レフに近い形や大きさの高倍率ズームレンズ付きコンパクトデジタルカメラについては「ネオ一眼」などと呼んで区別することもあります。実は他にも「コンパクトシステムカメラ」やら「ノンレフレックス」やら、色々な呼び方や区分の仕方があるのですが、ここではごく一般的なものだけにしておきます。


電子シャッター

現在、携帯電話やタブレット端末、トイカメラなどの超低価格帯の製品を除くほとんどのデジタルスチルカメラには、メカニカルシャッター(機械式のシャッター)が使われています。そしてこのシャッターには機械ゆえの「物理的な寿命」が存在します。一般的なデジタルカメラの場合、その相場は概ね10万~20万ショット。プロのフォトグラファーや連写マニアでもない限り、普通に写真を撮るだけならあまり気にしなくても良い数字です。が、タイムラプス映像の撮影ではちょっと事情が変わってきます。

一般的な30pのムービーを例に、メカニカルシャッターが寿命を迎えるまでの時間を計算してみましょう。1秒あたりのフレーム数は30。タイムラプス映像の撮影では、基本的にこの30のフレーム全てに対して1枚1枚写真を撮る、すなわちカメラのシャッターを切ることになります。よって再生時間あたりのシャッター数は30回/秒。

シャッターの寿命を15万回として、この「30回/秒」で割ると答えは5,000秒。だいたい83分の映像素材を撮影した時点でシャッターが寿命を迎える計算になります。60pで仕上げるつもりなら40分ちょっと。NGテイク(タイムラプスの場合「頑張って撮ってみたけど動画にしたらつまらんかった!」という事が割とよくあります)も含めると意外と早く到達してしまいます。もちろん15万回ジャストでシャッターが壊れると決まっている訳ではありませんが、不安要素は少ないに越したことはありません。

そこで注目したいのが「電子シャッター」です。

電子シャッターとは、メカニカルシャッターの働きを電気的に置き換えたもの。動く部分が無いので、物理的な寿命の心配はありません。また、シャッター音がしないので、静かな環境でも気兼ねなく撮影することが出来ます(一定間隔で延々と鳴り続けるシャッター音は意外と耳障りに感じるものです)。さらに、メカニカルシャッターと比べて露光時間の誤差が出にくい(=1枚1枚の写真の露出が安定する)というメリットもあります。

ただし、CMOSイメージセンサーと組み合わせた場合に動きのあるものを撮ると像が歪む(下の写真参照)というデメリットもあります。


LUMIX G6 電子シャッターの歪み比較
メカニカルシャッターで撮影
 
 
LUMIX G6 電子シャッターの歪み比較
電子シャッターで撮影


イメージセンサーの主流がCMOSになって以降、この「歪み問題」から“まともなスチルカメラ”では敬遠されていた電子シャッターですが、最近では歪みを低減する技術もそこそこ進み、状況に応じてメカニカルシャッターと電子シャッターを切り替えて使える製品も出てきました。搭載されている機種はまだまだ限定的ですが、タイムラプス撮影を目的にした場合、電子シャッターが使えるというのはかなり魅力的な選択肢です。


バリアングル液晶/電子水準器

これについてはそれほど気にする必要はありません。ただ、タイムラプス映像の撮影では1テイクに数十分~数時間という時間を要するため、「ちょっとアングルを直してもう1テイク」ということが辛かったり無理だったりすることがほとんどです。撮影中に微妙にカメラが傾いていることに気付いたりするともう最悪。最初から撮り直すか、傾いたままで良しとするかで延々と悩むことになります。なので、アングルを決めるための便利機能は多いに越したことはない!という意味で挙げてみました。


以上、3回に渡ってだらだらとお送りしてきた「絶対条件ではないけれど、あったらいいな♪」的な機能や性能はこれにて終了。次回はサンプルムービーの撮影で実際に使用した機種を元に、カメラ選びのまとめをお送りしたいと思います。
 

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